激務で高収入と言われる外銀について、具体的な外銀の一覧からその仕事内容、ランキングまで外銀について徹底解説します。
外銀とは投資銀行のこと。ざっくり言うと証券会社
外銀とは投資銀行のことであり、英語ではインベストメント・バンク(Investment Bank)と呼ばれます。欧米では銀行業と証券業はあまり区別されませんが、日本では銀行業と証券業ははっきりとした線引きがあります。
そのため、欧米の金融機関は投資銀行業務を行う法人を〇〇証券という名称で事業を展開しています。
投資銀行について詳しい解説はこちらをどうぞ。
投資銀行は各国の政府、企業、金融機関などを相手に金融サービスを提供しています。
商業銀行が中小企業や個人に預金・住宅ローンなどを提供しているのとは対照的です。
外銀は日本では特に大企業の取引、中でも国境をまたぐクロスボーダー取引に強みを発揮してビジネスを展開しています。
企業の資金調達は投資銀行の投資銀行部門(IBD)が担当します。国内企業が国内市場で資金調達をする場合には野村證券などの日系証券が強みを発揮します。
一方で国内企業が海外市場で資金調達したい場合には海外の機関投資家から資金を集めてくる必要があり、外銀、外資系投資銀行が強みを活かすこととなります。
マーケット部門でも同様です。日本の保険会社やアセットマネジメント会社が海外の株式や債券などの金融商品に投資したい場合、海外ネットワークを通じて買いたい時に買える、売りたい時に売れる流動性を日本の投資家に対して提供しています。
日本拠点の外銀、外資系投資銀行は日本の企業や機関投資家、政府などの顧客に対してグローバルなネットワークを通じた金融サービスを提供しています。
では、具体的にどのような外銀があるのかを見てみましょう。
外銀・外資系金融のティア別・ランキング一覧
外銀・外資系金融の業界をティア別にランキングしました。一般的に業界では以下のようなティア分け(序列)があります。
ティア1(トップティア)の外資系投資銀行
トップティアは米系投資銀行の3社です。
ティア2(セカンドティア)の外資系投資銀行
セカンドティアは米系投資銀行の2社です。
ティア3(サードティア)の外資系投資銀行
サードティアは欧州系の投資銀行となります。
就職や未経験の転職で複数の外銀の間で迷った場合には基本的にはランキング上位に就職することをおすすめします。
トップティアとセカンドティアの5社はすべて米系投資銀行であり、米系は概ねフルラインで投資銀行業務を行っています。
一方でサードティアになると投資銀行としてフルラインの業務展開は行っておらず、強みのある業界や稼げる分野に特化して日本では事業を行っています。
どこの会社に就職しても基本的には本人の努力が必要となりますが、上位ティアの外銀に入っておくほうが幅広い業務経験が積める可能性が高いと言えます。
案件フローの少ない投資銀行に入ると、ピッチブックを作成する機会は多いもののパワポ職人どまりになってしまうことがあり、具体的な案件の経験を積めない状況を最も避けるべきと思います。
上位ティアの外銀の方が相対的にディール・フローに恵まれ実戦経験を積める公算が高いです。
若手のうちはとにかく経験を積む=多くの試合に出場することを強くおすすめします。
米系の投資銀行については下記の記事も参考にしてください。
欧州系投資銀行はこちらです。
外銀で働くメリット
外銀で働くメリットはいくつかあります。
高給である外銀の年収
外銀の年収は20代で1千万円の大台に乗ることもあり、日系金融機関と比べても高い給与水準が期待できます。
弁護士や医師などの資格が必要な職業を除いて雇われる側では外銀、外資系金融機関はほぼ最高水準の給与です。
会社のそばに100㎡のマンションを借りて住む
食事に行ったらメニューの値段を気にせずに注文する
これが標準的な外銀のアナリスト・アソシエイトの暮らしぶりです。
外資系ではベースとボーナスに年俸が分かれており、ベースとボーナスは同じくらいの金額であることが多いです(ただし、年によって大きく変動する)。
具体的な数字のイメージは下記の記事で解説しています。
外銀が扱うのは、大型かつクロスボーダーの案件が中心
外銀の投資銀行部門で取り扱う案件は、金額規模が大型でありクロスボーダー案件が中心となります。
新聞で話題になるような案件に携わるチャンスが若いうちから多く、成長の機会が豊富です。
外銀はティア毎に人員体制に差はありますがどこも少数精鋭の体制です。
DCMおよびECMの資金調達であっても企業買収のようなM&Aであっても、100億円の案件でも1,000億円の案件でも必要となるプロセスやタスクは大きくは変わりません。
そのため効率性の観点から一定の金額規模がないと外資系投資銀行では案件を断る場合もあります。
またクロスボーダーの案件が中心となるのも外銀の投資銀行部門の特徴です。
日本国内で完結する資金調達やM&A案件は日系証券が圧倒的な存在感があり、ここに食い込んでいくのは外資系投資銀行にとってかなりハードルが高いです。また国内案件は資金調達でもM&Aでも総じて案件の金額規模が小さくなる傾向にあります。
このような背景で外銀が扱う案件は、大型かつクロスボーダー案件が多くなります。
専門性の高い金融業界でキャリアのオプションが広がる
若いうちから競争の厳しい世界でキャリアを積んでいくことで、いろんな面で鍛えられます。
- 競争が厳しい世界でプレッシャーに耐えて仕事を遂行する力
- 様々なバックグラウンドを持つ同僚と目標を共有してプロジェクトを進める経験
- コーポレートファイナンスを中心に金融業界で必要とされる専門性の高いポータブルスキル
外銀、外資系金融機関では終身雇用の企業文化はまったくなく、そのまま投資銀行の世界でキャリアを積んでいく人もいれば、起業する人、スタートアップに行く人、プライベートエクイティに転ずる人など様々です。
投資銀行を中心に広がる人的ネットワークが手に入ることも外銀で働くメリットと言えます。
外銀・外資系金融のデメリット
メリットも多いですがデメリットもあるのが外銀です。
リストラ・人員削減は避けられない外銀での仕事
景気に波があるように外資系金融の世界でもリストラや人員削減は定期的に起こります。
特にフロント部門、たとえば投資銀行部門(IBD)やマーケット部門はミドルやバックオフィスと比べると、給料が高い分、リストラの効果が大きいため、人員削減の対象になることが多いです。
このような事態も想定し、選べるのなら外銀の中でもティアの高い先を選択することをおすすめします。トップティアからセカンドティア、サードティアへの転職は比較的容易であるからです。
外銀はプレッシャーが大きく激務
少数精鋭で案件を回していくためひとりに掛かる業務負担、プレッシャーは大きいです。
クロスボーダーの案件では海外とのやり取りは必須であり、電話会議が深夜になることもあります。金曜の夜中に海外の交渉先や案件弁護士とコールを行い、週末に日本の顧客向けに資料にまとめて、月曜朝一の顧客ミーティングに向かうといったことがあります。
こういったことが激務で辛いと感じる人は向いてないかもしれません。むしろこういうことがやりたくて外銀に入るという人が向いています。
外銀に入るには?就職難易度や必要な資格。向いている人
新卒と中途採用に分けて解説します。
新卒で外銀を目指す場合
新卒で外銀を目指すのが最も倍率が高く競争が厳しいです。
次のような人が受かりやすいです。
- 高学歴であり論理的思考力がある
- 海外での生活・学業経験があり異文化への対応力・受容性がある
- なぜ外銀で働くのか自分の言葉で説明できる(自己分析ができていてる)
- コミュニケーション能力が高い(面接やグループディスカッション)
- 精神的・肉体的に元気でありタフである
- 健康的で清潔な身だしなみ・見た目
外銀では膨大な数のエントリーシートが送られてきます。
1の学歴や2の海外経験が見劣りするようであれば、”公認会計士の取得に向けて勉強中”あるいは”就活が終わったら短期留学に行く”など補強の仕方はいくらでもあると思います。
エントリーシートの段階で選考から漏れないようにできるだけ努力してください。
3と4について練習することで鍛えることができます。5と6は外見の印象であり今までの生きざまが反映されるところですが、清潔感のある身だしなみは最低限のマナーです。
新卒の就活競争を一歩抜け出すためには
在学中に社会人経験が積めると差別化につながり就活競争を一歩抜け出せると思います。
今までたくさんの学生候補者と面接してきて、この人は他の学生とは全然違うと感じたことが数回あります。
その候補者はいずれも在学中に仕事の経験、営業企画の経験がある方達でした。アルバイトやインターンではありません。
社会人経験のない学生候補者の中に即戦力とまでは言わないものの社会人経験のある候補者が混じっているので、話していてかなり目立ちました。
小さいIT系の企業だったと思いますが、実際に仕事を任されて売上げをあげていく経験は他者との差別化につながります。
学生の志望動機を聞いていると、「日本経済や日本企業に貢献したい」といった理由をよく聞きます。
高い志を持つことは必要ですし、本人の動機なので他者がどうこういうものではないですが、社会人経験がないから言える理由に感じます。
半年でも在学中に社会人経験が積めると他学生候補者と大きく差別化できると思います。
外銀・外資系金融に入るのに必要な英語力
新卒で外銀に入るのはかなりの狭き門です。
「英語力があってスタートラインに立てる」のが外銀です。
アメリカで英語が話せるいっても評価されない、日本で日本語が話せると言っても評価に値しないのと一緒です。
英語力を武器に仕事がしたいなら日系の方がおすすめです。
「英語力があると有利」なのは日系です。日系では英語力があることは武器になります。
最近は多くの学生が英語力をエントリーシートでアピールしています。
海外留学・交換留学やTOEICの点数など。
TOEICの点数が高くても実際の英会話力がおぼつかないことが経験上多く、やはり海外生活の経験はアピールになると思います。
英語力と書いてますが、必要なのは英語でのコミュニケーション能力です。相手の意見を受け入れながらも自分の主張をしっかりと説明する、など。
英語でのコミュニケーション能力のある人材プールの中から、優秀な人材を採用するのが外銀です。
それでも、部署によっては日々の仕事では英語をまったく使わない部署もありますので、英語力がないのではあれば自分の強みを徹底的にアピールするのも戦略とひとつです。
外銀の就職に有利な資格
”士業”に関わる資格では、弁護士や公認会計士は圧倒的に有利です。ですが、簡単には取れない資格です。
比較的取り組みやすい資格に証券アナリストが挙げられます。
証券アナリストはCFA(Chartered Financial Analyst)とも呼ばれ、日本でも米国でも評価の高い資格です。
1次試験、2次試験とありますが、1次合格などでも十分にアピールになります。
ただし、資格は一定の知識や学力の証明でしかありません。
”稼げる”人材を外銀は求めており、すぐに稼げなくても、稼げるポテンシャルがあることを示す必要がある点は強調しておきます。
また、わたしの時代は就活支援サービスはありませんでしたが、いまは充実しています。
無料で使えるので(企業側が費用負担)、記事のリンクを貼っておきます。
中途採用で外銀に未経験で転職するには
外銀に新卒で入るのも中途採用で入るのも同じように狭き門です。
それでも私は未経験であっても中途採用の転職の方が外銀には入りやすいと思います。
未経験で外資系金融に中途入社する事例を私の知るケースで挙げると以下の通りです。
- 総合商社で事業投資の経験があり、外銀の資本市場部に中途入社
- 化学メーカーで経営企画部でM&Aを担当しており、投資銀行のM&Aに転職
- メガバンクで法人営業の経験があり、外資系金融のカバレッジに中途採用
- 地方銀行のリテール営業から、米系投資銀行のDCMに転職
- 格付機関(例えばムーディーズやS&P)から投資銀行の資本政策アドバイスに中途で転職
- メガバンクや事業法人での海外勤務の経験
- 事業法人のIR部から投資銀行のカバレッジへの中途採用
未経験の転職とはいえ、かなり近い分野での業務経験を有していると言えます。
もし外銀でキャリアを積んでいきたいのなら、今の会社で外銀のカバレッジが営業をかけているような部署に転属することをおすすめします。具体的には、経営企画や事業企画、財務などが該当すると思います。
またコーポレートファイナンスの実務経験があれば即戦力です。
外資系の投資銀行は人の入れ替わりが早いのでタイミング次第ではポジションに欠員があります。
タイミングはなかなか外にいると分かりませんが、業界動向を熟知するエージェントを使うことをおすすめします。使えるエージェントに当たることが大事なので複数使ってもよいでしょう。
投資銀行に強い転職エージェントはこちらの記事を参考にして下さい。