HSBC(香港上海銀行:The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited)について解説します。
HSBCの歴史
HSBCは、国際的なニーズに応えるローカル・バンクというシンプルなアイデアから生まれました。
1865年3月に欧州とアジアの間の貿易をサポートするために海運会社で働くトーマス・サザーランドにより香港でHSBCは創立されました。1か月後には上海で支店を開設しています。
1866年には香港で取付け騒ぎが発生し、11あった外国銀行のうち6つが破綻に追い込まれますが、HSBCは生き残り、かえって評判を高くします。
国際的な貿易金融はHSBCにとって注力ビジネスであり、1875年までにアジア、欧州、北米にまたがる7つの国に事業を拡大させ、日本の横浜、インドのコルカタ、ベトナムのホーチミンシティ、フィリピンのマニラに支店を開設します。
中国のお茶・絹、インドの綿・ジュート(黄麻)、フィリピンの砂糖などの輸出品に関するトレード・ファイナンスに注力していました。
政府・公的部門に関する金融にも進出し、1874年には中国向けの公的ローンを実行するなど、鉄道や他インフラストラクチャーに融資をするようになります。
20世紀前半はHSBCにとって厳しい時代となりました。
第一次大戦後、ゴムや錫の貿易が活発であったアジア市場で更なる拡大を目指しますが、その後の世界恐慌で大きな痛手を被ります。
19世紀に中国のインフラ整備において重要な役割を果たしたことで、HSBCは1920年代には中国における外国銀行として主導的な地位を確立します。1923年には上海に新しく支店を開設し、お茶・絹の貿易業者への融資や外国為替・資金送金サービスを中国の貿易業者に提供するようになります。
1941年には戦争の影響を受けて、HSBCは本社をロンドンへと移転します。
戦争が終結するとHSBCは香港に本社を戻し、地域経済の復興に大きな役割を果たします。香港は製造業の中心地として復興する中、HSBCは紡績工場や織物工場に融資を提供していきます。
1905年代に入ると中華人民共和国の成立に伴い、上海支店を除いて中国におけるネットワークを閉鎖することとなります。
戦略の変更を受けて、HSBCはThe British Bank of the Middle Eastを買収します。これがHSBCによる最初の銀行買収であり、1965年までに170の拠点網を抱えるまでに成長します。
また1965年の中国の銀行セクターの危機が契機となり、香港の大手プライベートバンクである恒生銀行(Hang Seng Bank)を救済買収します。
1980年委はアジアから外に出て、アメリカのMarine Midland銀行を買収します。Marine Midlandは1850年に創立されたコーンや小麦の貿易金融に強みを持ち、ニューヨーク州の中で最も存在感のある銀行でした。この買収を契機にHSBCはグローバルバンクとしての道を進むこととなります。
1970年代後半の中国による外資開放に伴い、1984年にHSBCは中国メインランドにおける銀行免許を外国銀行として1949年以来で初めて取得します。
中東、インド、米国での買収によりネットワークを拡大させていたHSBCは1992年に英国のMidland Bankを買収し、欧州における地位を確立し、グローバルバンクの礎を築き、今日に至っています。
HSBCの特徴・組織
HSBCは、トレードファイナンスや為替取引、SWIFTを使った海外送金における市場シェアが高く、総じて商業銀行業務に強みがある金融機関と言えます。
HSBCではWealth and Personal Banking、Commercial Banking、Global Banking and Marketsの3つのセグメントでビジネスを展開しています。
Revenueのセグメントごとの内訳は以下の通りです。
HSBC Holdings plc Strategic Report 2022
Wealth and Personal Banking
個人から超富裕層(Ultra High Net Worth)までグローバルに38百万人の顧客に対して、預金・住宅ローン、生命保険、投資運用、プライベートバンクのサービスを提供しています。
Commercial Banking
54の国と地域において中小企業から大企業までの顧客に対して銀行サービスを展開しています。特にクロスボーダーの貿易・決済業務に強みがあります。
また最近では低炭素経済への移行を成長機会と捉え、持続的なサプライチェーンソリューションの提供にも力を入れています。
Global Banking and Markets
多国籍企業、金融機関、機関投資家、公的・政府部門に対して金融サービスを提供しており、顧客に対して資金決済、キャピタルマーケット、リスク管理、アドバイザリーのサービスを展開しています。
日本におけるHSBC
HSBCは1866年に横浜に支店を開設し、1869年には神戸、1872年に大阪、1896年に長崎に支店を開設しています。
日本では下記の主要グループ会社を通じて事業を展開しています。
エンティティ | 事業内容 |
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香港上海銀行東京支店 | 商業銀行 |
HSBC証券 | 投資銀行 |
HSBCアセット・マネジメント | 資産運用 |
日本のHSBCは商業銀行業務に強いイメージです。投資銀行業務も展開してるものの、あまり案件を通じて名前を聞くことはないというのが率直なところです。
欧州系投資銀行について下記の記事でまとめています。