PR

【投資銀行部門】デットキャピタルマーケット(DCM)の仕事内容

〇投資銀行の基礎知識
記事内に広告が含まれています。

DCMDebt Capital Marketの略で日本語にすると債券資本市場部となります(債権と間違えないように注意)。

その名の通り、債券での資金調達を扱う部署です。大企業が社債を発行して資金調達を行うときに、DCMが顧客企業に営業を行い、投資家需要を調査して、価格決定を行います。

ここでは投資銀行部門の中でよく聞かれるDCMについて解説します

デットキャピタルマーケットの仕事内容の特徴

投資銀行の中で他部署と比べてDCMはどのような特徴があるのか?ポイントを絞って説明します。

雇用の安定感が高い・不況に強い

金融業は元来、景気の影響を受けやすい業種です。企業の資金需要は景気の動向に左右されるからです。それでも投資銀行の中でDCMは景気の影響を比較的受けにくく、雇用の安定感は相対的に高いと思います。

スタートアップや創業間もない若い企業はエクイティ性の資金調達を行いますが、社債を発行するのは大企業が中心です。大企業ももちろん景気動向の影響は受けるものの、一定の資金調達は必ず行っており、その際に社債は活用されます。

またDCMの顧客は社債を発行する企業だけに限りません。地方自治体や公的機関も債券を発行します。地方自治体が発行する債券は地方債、公的機関(財投機関)が発行する債券は財投機関債と呼ばれています。

公的な発行体である地方公共団体や公的機関は毎年、債券発行のための予算が確保されます。地方債、財投機関債の発行は相対的に景気の影響を受けにくく、このような顧客を担当するDCMは投資銀行の中でも雇用の安定感が高い傾向にあります。

案件数が圧倒的に多い

案件数が圧倒的に多いのもDCMの特徴です。多い企業になると社債を毎月発行する、四半期に1回は必ず発行するといった資金調達を行っています。社債は資金繰りを行うため運転資金の調達で発行されることが多いです。

そのため同一の企業が年に複数回、社債を発行することは珍しいことではありません。一方でエクイティ案件は大企業になるとめったに起きません。ECMの案件が発生するのは、10年、20年に1回ということもざらにあります。

カバーする顧客が幅広い

DCMの顧客である債券を発行する発行体は主に以下のように分類されます。

  • 地方自治体
  • 公的機関・財投機関
  • ユーティリティ・公益企業(電力・ガス会社など)
  • 一般の事業会社
  • 金融機関(銀行、保険会社など)
  • 大学法人

必要となる知識や当該業界を取り巻く規制や事情が異なるので、上記のように分類されていることが多いです。DCMの中での異動は比較的あります。

地方自治体や公的機関は株式を発行することはないので、DCMならではの顧客と言えます。

未経験でもチャンスあり

カバーする顧客が多い仕事のため、IBDの中でも人員は恒常的に不足していることが多いです。そのため未経験であっても転職などでチャンスは十分にあると思います。

未経験の人にも門戸が開かれている点がDCMの特徴です。

債券は金利系のプロダクトであり、元銀行員の人も多く活躍しています。

DCMの年収

未経験の場合に最初から高待遇を獲得することは難しいと思いますが、バイスプレジデント(VP)となり担当顧客をしっかり持てるようになると、年収は1,000万円は十分に超えるでしょう。

仮に大台に届いてない場合には、ヘッドハンターなどを使って同業他社での年俸水準をチェックすることがおススメです。聞くのは無料です。

デットキャピタルマーケットで必要となる英語力

国内市場で発行される債券を担当するDCMの場合には、英語力がなくても困ることはあまりないです。それでもたまに、海外の投資家が日本に来るので発行体と面談する、海外投資家が円建ての債券に興味があるので英語で説明する、資料をつくるといった場面はあります。

ですが社内で英語が得意な人がいるはずなので、直接的に困ることはないと思います。英語力が必要となるのは以下の場合です。

  • 海外の発行体が日本の国内市場で社債を発行するケース
  • 日本の発行体が海外の市場で債券を発行するケース

この場合には高い英語力が求められます。海外の発行体が日本に来日して日本の投資家と面談をすることもありますし、食事を一緒にすることもあります。日本の発行体を海外に連れていき海外投資家と面談することも多くあります。

いずれの場合でもニューヨーク、ロンドン、香港などの同僚とコミュニケーションをとる必要があり、業務に関して意思疎通ができる英語力は必要となります。ネイティブである必要はありませんが、ビジネスレベルは必要です。

DCMの仕事の流れ

投資銀行の仕事はオリジネーションとエグゼキューションに分けられます。この2つのフェーズ別にDCMの仕事の流れを大まかに説明します。

オリジネーションのフェイズ

DCMバンカーは日々、担当顧客に対してマーケットアップデートを行います。前日の海外市況や国内の株式・金利の動き、起債市場の動向などをメールで伝えたり、電話したり、場合によっては往訪した上で、情報提供を行います。

あるタイミングになると発行体からRFPが送られてきます。Request for Proposalの略であり、提案要請のことです。提案要請に従って期日までに提案書を提出します。DCMの提案書は大まかには以下の内容が含まれます。

  • 起債環境に関する現状と今後の見通し
  • 投資家動向と販売戦略
  • 推奨する時期・起債スケジュール
  • 想定発行条件・インディケーション
  • 自社の主幹事実績等

提案書提出までの期間は、月曜に要請が来て金曜に提出する場合や提出まで2-3週間ある場合などさまざまです。またページ数は2-3枚の場合もあれば、100枚くらい書く場合もあります。

提案書を提出しプレゼンを行い、結果を待ちます。「マンデート」の連絡があると晴れて主幹事として指名を受けたことになります。主幹事になれなかった場合は案件には入れません。

主幹事の指名を受けた場合のみ、次のエグゼキューションのフェーズに行くことになります。

エグゼキューションのフェーズ

主幹事にも事務主幹事(トップレフト)と共同主幹事の2つのステータスがあります。事務主幹事になると案件全体の取りまとめを任されます。これは名誉なことであり、また事務ではない共同主幹事よりも高いシェアをもらえることが多いです。

まず最初にキックオフ・ミーティングを行いますが、案件概要、マーケティング・スケジュール、想定発行条件(インディケーション)が主幹事より示されます。

想定発行条件は極めて大事なものです。必要な金額を想定している条件で調達することができるかに直結します。市場環境が急に変わって想定していた条件が変更になることはありうることですが、基本的には一度示した想定発行条件は達成していくことが求められます。

国内債のマーケティングはソフトヒアリング、主幹事マーケティングなどいくつかの段階に分かれ、4-5日間から長い場合では1-2週間の期間をかけて投資家に対して需要予測を行います。

投資家に対して需要のヒアリングを行うのは債券セールスの仕事であり、DCMとセールスの間にはシンジケートがいます。シンジケートも証券会社において重要な機能を担っており、発行体と投資家の間で中立的な立場からフェアなプライシングを行います。

無事に需要が集まり条件決定日に債券の利率を含む諸条件が確定したら無事にプライシングは終了です。条件決定日のおおむね5営業日後に設定される払込日に債券の発行代わり金が発行体の口座に入金されたら案件は無事終了です。

その後、DCMバンカーは発行体に対して起債報告を行います。事前の提案と比べてうまくいったところ、想定が外れたところなどを分析し、次回債に向けた示唆や反省点などを議論します。ここまで行って、エグゼキューションは終了です。

デットキャピタルマーケットの仕事のまとめ

オリジネーションからエグゼキューションまでの仕事の流れを説明しましたが、DCMバンカーが一人で担当する顧客は少ない人で5件程度、多い人で50件くらいは担当しています。

案件が同時に走る場合もあり、たくさんの案件を効率よくこなしていく仕事になるため、かなり多忙な日々を送るのがDCMバンカーの宿命と言えます。

タイトルとURLをコピーしました