ドイツ最大の金融機関であるドイツ銀行(Deutsche Bank AG)について解説します。
ドイツ銀行の歴史
1870年にベルリンにて、アデルベルト・デルブリュック(Adelbert Delbrück)とルードヴィヒ・バンベルガー(Ludwig Bamberger)によって設立され、プロイセン政府(the Prussian government)によって銀行免許が付与されます。
プロイセン政府は特に海外事業を重視しており、すべての分野における銀行業を行うことを目的とし特にドイツと他の欧州各国および海外市場の間の貿易を促進していくと強調されています。当時はイギリスが世界貿易の覇権を握っていた時代であり、ドイツが行う海外とのトレード・ファイナンスをイギリスの銀行から取り返す狙いもあったようです。
ドイツ銀行は当初から海外展開を強く意識して事業が展開されており、1871年と1873年にブレーメン、上海、横浜、ハンブルグ、ロンドンに支店が開設されました。
国家としてのドイツ(Germany)が誕生する以前からDeutsche Bankの商号で事業が営まれています。
第一次大戦後が終わると様相が一変し、ドイツはインフレに見舞われました。ドイツ銀行は海外における投資および支店を失い、その一方でドイツ国内では地域銀行との合併・統合が進み国内支店ネットワークが拡大しました。またドイツ銀行は1924年のダイムラーとベンツの合併において重要な役割を果たします。
1933年にヒトラーがドイツ首相に任命されます。ドイツ銀行にとって厳しい時代となり、第二次世界大戦が終了した1945年以降も暗黒の時期が続きます。1947年から1948年にかけてドイツ銀行は10の銀行に分割されます。西ドイツの誕生とともに、3つの銀行に再編されます。分割された3つの銀行が再びドイツ銀行として統合するのは1957年のことです。
ドイツが債務国から債権国に移り変わる戦後の復興期になるとドイツ銀行の国際ビジネスはより重要性を増していきます。特に1958年のアングロ・アメリカン(Anglo-American Corporation of South Africa)によるドイツ市場での社債発行はドイツ銀行による象徴的な案件となっています。
1989年の英商業銀行モルガン・グレンフェルの買収を契機にグローバル金融機関の道を進み始め、1999年には米バンカーズ・トラストを買収したことで米国市場へと進出しました。グローバル金融危機では小さくない痛手を被りましたが、創立以来150年の歴史を経て欧州を代表するグローバルな金融機関となっています。
ドイツ銀行(ドイチェバンク)の特徴・組織
マイン川河畔のフランクフルトにドイツ銀行の本店はあり、以下の主要セグメントで事業が展開されています。
Corporate Bank
多国籍企業に加えて、ドイツの”Mittelstand(ミッテルシュタンド:ドイツ経済を支える中小企業)”などの法人企業に銀行サービスを提供しています。リスク管理、キャッシュマネジメント、貸付、トレードファイナンス、信託、証券管理などを強みにしています。
Investment Bank
Investment Bankは、債券為替セールス・トレーディング、資本市場・アドバイザリー(Origination & Advisory)、リサーチから構成されています。
債券為替セールス・トレーディングは外国為替、国債、新興国債券、クレジットなどを取り扱っています。
資本市場・アドバイザリーはDCM、M&A、”株式に関するアドバイザリー”を行っています。
2019年7月に株式売買業務からの撤退と投資銀行部門の縮小を発表しています。
ドイツ銀行、1.8万人の削減と株式事業撤退を発表
ロンドン(CNN Business) ドイツ銀行は7日、経営再建策の一環として、今後3年で計1万8000人の人員を削減し、株式売買の業務から撤退する計画を発表した。さらに投資銀行部門を切り離し、740億ユーロ(約9兆円)の不良資産を買い取る受け皿の銀行を設立する。
ドイツ銀行は149年の歴史を持ち、欧州金融の要と位置付けられてきた。1990年代末から欧州内外で投資銀行部門を強化したが、リーマン・ショックで大きな打撃を受けた後、経営難が続いていた。
ドイツ銀行、1.8万人の削減と株式事業撤退を発表 – CNN.co.jp
Private Bank
プライベートバンクは個人、富裕層、起業家を顧客とし、通常の銀行サービスに加えて投資運用も手掛けています。ESGに関する金融商品も豊富にそろえています。
Asset Management
アセットマネジメント業務は”DWS”のブランドで事業が展開され、顧客は世界中の個人及び法人の投資家です。ドイツ銀行がDWSの株式の79.49%を保有(Annual Report 2022)しており、グループのコアビジネスとして位置づけられています。DWSはフランクフルト証券取引所に上場されています。
主要なアセットクラスはすべて取り扱っており、株式、債券などのマルチアセット運用やオルタナティブ投資を行っています。不動産、インフラストラクチャー、市場性商品、サステナブル投資も得意としています。
日本におけるドイツ銀行グループの事業展開
日本では以下のエンティティで事業を展開しています。
エンティティ | 事業内容 |
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ドイツ証券 | 投資銀行 |
ドイツ銀行東京支店 | 商業銀行 |
ドイチェ・アセット・マネジメント | 資産運用 |
ドイツ証券の強み
ドイツ証券は日本ではフルラインの投資銀行業務は行っていません。DCMとM&Aをコンシューマー&リテール、フィナンシャルスポンサー、テクノロジー、メディア、テレコム等の特定のインダストリーに特化してサービス展開をしているイメージです。
ドイツ証券の入社難易度・年収・給料・激務度
少数精鋭の職場環境でひとりで何役もこなすことが求められ、必然的に激務となります。
資金調達の案件の次はM&Aの案件に従事するといったこともざらにあります。どんな仕事・案件であってもくらいついていく姿勢が求められます。
少数精鋭の裏返しで入社難易度は高めですが、しっかりとパフォーマンスを維持していれば業界の中で相応の待遇が期待されます。