ここでは日系の5大証券会社の投資銀行部門について、特色などを解説します。
野村證券の特色
日本の5大総合証券の1角をなすが事実上の証券業界1位です。銀行傘下の証券会社ではないことから大和証券とともに独立系の証券会社と言われます。
- カバレッジの顧客のグリップがハンパない。当然、提案も内容がしっかりしていると思うが、カバレッジのグリップだけで取ってくる案件がある
- イメージかもしれないが全員オールバックでいい意味で見た目に迫力がある
- マーケット部門のセールスもすごい。投資家のグリップが強く販売力がある(セールスが強いことはIBDとしてもありがたい)
- 長年、日本の証券業界で独走してきた歴史は簡単には追いつけない
- 2008年に旧リーマン・ブラザーズの欧州・中東部門を買収し海外基盤も強化
カルチャーが合うのであれば、野村證券に入っておけばまず間違いないと思います。野村で活躍できればどこいっても通用します。
一方で以下のような課題があるように思います。
- 海外事業の強化。海外事業での特別損失が過去に多い(2021年アルケゴス、2019年リーマン買収ののれん等)
部外者の立場で勝手に課題を挙げましたが、この課題に対処すべきは経営陣・マネジメントレベルの人間であり、ジュニアバンカーが気にすることではないです。
若手の時代を過ごすのには野村證券は(カルチャーが合えば)最高の環境であると言えます。
大和証券の特色
野村證券と並び独立系の証券会社です
一時期は旧住友銀行と提携し共同出資のホールセール専業の証券会社を設立していたこともありましたが、2009年に業務提携が解消され、銀行系ではない独立系の証券会社となっています。
- ブームが来るだいぶ前からSDGsファイナンスに取り組んでいた
- 旧4大証券の1角であり、銀行系にはない”株屋”としてのいい意味での歴史がある
- いい意味でマイルドな人が多く野村證券のように変にとがってない
- 業界1位の野村證券にしっかりついていって、2位を堅持している
課題は以下の通りです。
- 証券業界は野村が強すぎて順位が入れ替わることがなく、2位が定着している
- 銀行系証券が迫ってくる中、顧客企業とのつながりをいかに維持・拡大していくか
じっくり実力を身に着けていくのに相応しい環境が大和証券にはあります。
SMBC日興証券の特色
旧日興証券は野村證券、大和証券、破綻した山一證券と並び、4大証券の一角を占めていました。1998年に米トラベラーズと提携しましたが、2006年に粉飾決算が表面化すると2007年には米シティグループの傘下に入りました。このように、日興証券は資本関係では外資系であった期間もあります。
その後2008年のリーマンショック以降、業績の悪化を受けてシティグループは日興証券を三井住友フィナンシャルグループに売却し、銀行グループの傘下にある銀行系証券となりました。
- 旧4大証券のDNAは残っており、”株屋”としての証券マンの意気込みが感じられる
- SMFG(三井住友フィナンシャルグループ)の顧客基盤にアクセスが強い
- 銀行系でありながらECMにも強いイメージ
課題は以下の通りです。
- なんだかんだと不祥事が多いイメージ
- 自前での海外事業の強化はこれから(会社が身売りされることが多すぎた。ただし急速にキャッチアップしている)
上記は経営者の課題であり、ジュニアバンカーがスキルを身に着ける環境はしっかり整っています。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の特色
MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)の証券会社として存在していた三菱UFJ証券が、2010年にモルガン・スタンレー証券の投資銀行部門を承継して、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUMSS)に社名変更し現在に至ります。MUFG傘下の銀行系証券です。
モルガン・スタンレー証券のIBD以外の部門は、モルガン・スタンレーMUFG証券(MSMS)に名称変更を行っており、MUMSSとMSMSの両社は連携して投資銀行業務を行っています。
- 顧客によって日系の顔と外資系の顔を使い分けてアプローチしている
- MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)の顧客基盤にアクセスが強く、また三菱グループには優良顧客が多い
- 国内にはMUMSSの販売力、海外にはMSMSの販売力を活用し、相互補完的な関係にある
一方で課題は以下の通りです。
- MSMSと連携していることは顧客企業にはメリットですが、働くあなたの立場でメリットなのかは考える必要があります。自分が担当するのは一つの部署であり、すべてを見れるわけではないからです
- グローバル業務はモルガン・スタンレーに頼った事業展開となっていること
どの部署に所属するかで担当する仕事の性質が変わってきそうです。
みずほ証券の特色
みずほフィナンシャル・グループ(MHFG)傘下の銀行系証券会社です。
日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行が合併してみずほ銀行が誕生しており、3つの銀行が統合されたことで、その顧客基盤はMUFGやSMFGと比べても幅広いものがあります。
- 顧客基盤が他メガや独立系証券と比べて分厚いため案件数も多い
- 銀行系であること、銀証連携を推進し、DCMではリーグテーブルで1位
- 2015年にRBSの北米事業を買収し、それ以降、米州でも投資銀行業務を含む証券事業での存在感が大きい
- 特別職務給がもらえるようになると、年収が数百万円あがる。入社4~5年目に支給される
一方で課題は以下の通りです。
- DCM(債券)に強いイメージの裏返しで、ECM(株式)の強化が課題
- グループとしてシステム・ITに強いイメージを持ちづらい
日系証券はどこでも教育・研修体制はしっかりしています。
日系証券の年収
部門や部署や個人の成績によってボーナスを含む年収は変わってきますが、ざっくり言うと日系投資銀行の中では、独立系の証券会社の給与待遇がいい傾向にあります。
中でも野村は外資系に次ぐ給与待遇であり日系の中ではよいと言えます
独立系の野村、大和に加えてSMBC日興証券も銀行系でありながら、給与の面では独立系並みに好待遇を払っているようです。
銀行系証券では銀行出身者が銀行の給与体系のまま働いていることがあります。
銀行の感覚や相場観で判断されることもあるため銀行系証券の給与体系は独立系と比べて見劣りすることがあったようですが、最近では改善されてきています。
たとえば、みずほ証券では入社4~5年目に特別職務給が支給され、年収で数百万円のアップとなります。
銀行系証券とは
リスクの高い証券業務によって預金者から預金を預かる銀行業務が影響を受けないように証券業務と銀行業務は分離されていましたが、1993年に銀行と証券の子会社方式による相互参入が解禁されました。
各銀行は証券子会社を設立し金融グループの統廃合を経て、現在に至っています。
まとめ
日系投資銀行の特色について解説をしました。
企業はいろいろな立場で分析し解説することができます。株主・経営者・従業員・顧客・取引先などの利害関係者のことをステークホルダーと言います。
株主=株式投資家の立場で素晴らしい会社であっても従業員=働く人の立場ではまた意味合いが異なってくることもあります。
マクロの視点で企業全体を捉えながらも、一緒に働く人との縁も大事にするミクロの視点も就職・転職では大事です。
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