ここではモルガン・スタンレー証券について解説します。
モルガン・スタンレー(MS)の特徴・歴史
モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)は政府、企業、個人に対して幅広い金融サービスを提供するグローバルな金融機関です。
モルガン・スタンレーの歴史
1933年に制定されたグラス・スティーガル法により旧JPモルガンの債券部門が分離されたことにより、モルガン・スタンレーが誕生します。この際に債券部門に移籍し、共同設立者の一人となったヘンリー・スタージス・モルガンがモルガン・スタンレーの”モルガン”の由来です。ヘンリー・モルガンは旧JPモルガンの創設者であるジョン・ピアポント・モルガンの孫でもあります。
- リスクの高い投資銀行業務と健全性が求められる預金受入や信用貸出を行う商業銀行業務を切り離すことを目的に1933年に制定された米国の法律
- 1999年のグラム・リーチ・プライリー法により廃止
1997年には個人業務に強いディーン・ウィッター・ディスカバーと合併し、商号がモルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター・ディスカバー・アンド・カンパニーとなります。その後、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター・アンド・カンパニーとなり、現在の商号となっています。
2007年の世界金融危機では株価が大幅に下落し大きく財務的な影響を受けました。金融不安が色濃く残り、モルガン・スタンレーでもサブプライム住宅ローン関連の損失が大きく膨らむ中、2008年9月には連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board, FRB)より金融持株会社(a financial holding company)への転換が承認されます。
同年10月に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と資本提携し、優先株の形で90億米ドルのMUFGによる出資を受けました。
2020年10月にネット証券であるEトレード(E*Trade)を買収し、Wealth Managementを強化しています。
2021年3月にはイートン・バンス(Eaton Vance)の買収を完了し、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントと統合され、資産運用業務が強化されています。
モルガン・スタンレーの特徴
モルガン・スタンレーでは3つのセグメントに分けて事業を展開しています。
・Institutional Securities
企業、政府部門、金融機関、超富裕層(UHNW: Ultra-High-Net-Worth)の顧客に対して幅広い商品やサービスを提供しています。
投資銀行ビジネスでは、DCMやECMを含む資金調達、M&A、企業再編、プロジェクトファイナンスを含む財務アドバイザリー業務などがあります。
株式、債券ビジネスではセールス・トレーディング、プライム・ブローカレッジ、マーケットメイクなどがあります。
また、企業向けローンや商業用不動産向けローンなどの貸付業務も行っています。
リサーチもInstituional Securitiesのセグメントに含まれます。
- 日本では富裕層というと金融資産1億円ですが、純資産3千万ドル以上(ざっくり40億円)UHNW(Ultra High-Net-Worth)を持つ富裕層カテゴリーがあります。
- 投資銀行ビジネスを行う上で、この投資家層にアクセスできるかどうかがポイントになる局面もたびたび出てきます。
- 2020年のコロナウィルス拡大により世界経済は大きな打撃を受けましたが、世界でUHNWに属する人々の金融資産はむしろ急増しています。
・Wealth Management
個人から機関投資家に対して金融サービス・ソリューションを提供しています。ブローカレッジ、カストディ、投資アドバイス、資産運用プランニングなどが含まれ、ストックプラン、住居用不動産ローン、退職金プランなどのサービスも行っています。
・Investment Management
様々な地域、アセットクラス、商品をカバーする投資戦略・商品を提供しています。株式、債券からオルタナティブ投資まで幅広い顧客に投資機会を提供しています。
日本におけるモルガン・スタンレー
日本においてモルガン・スタンレーは以下3つのエンティティを通じて事業・サービスを展開しています。
エンティティ | 事業内容 |
---|---|
モルガン・スタンレーMUFG証券 | 投資銀行 |
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント | 資産運用 |
モルガン・スタンレー・キャピタル | 資産運用 |
モルガン・スタンレーの歴史は古く1970年に最初の駐在員事務を構えています。
不動産投資を行うファンドを抱えていることがモルガン・スタンレーの特徴です。モルガン・スタンレー・キャピタルは不動産関連資産に投資するファンドを保有しており、不動産投資のアドバイザリーからアセットマネジメントまで幅広い業務を行っています。
- 不動産投資は株式・債券投資に並んで世界中の機関投資家、富裕層に取り組まれている資産運用手段の一つです。
- 不動産投資は株式や債券と比較すると市場流動性に劣りますが、家賃収入というインカム・ゲインが見込まれるため、相対的に安定したリターンが期待できるのが特徴です。
モルガン・スタンレーMUFG証券の強み・MSMSとMUMSSの違い
モルガン・スタンレーMUFG証券(MSMS)と三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUMSS)は2008年の戦略的提携の開始以降、投資銀行業務において協働した関係となっています。
特集:モルガン・スタンレーとの戦略的提携|MUFGレポート2015|三菱UFJフィナンシャル・グループ
モルガン・スタンレーMUFG証券には投資銀行部門のカバレッジ・バンカーは在籍していません。いるのは、DCM・ECMのキャピタルマーケッツとマーケット部門のセールス&トレーディングだけとなっています。
モルガン・スタンレーのカバレッジバンカーはMUMSSに移籍しており、三菱の名刺で営業を行っています。
三菱の顧客基盤にモルガン・スタンレーが持つグローバルネットワークを活用したサービスを提供できるため、かなり効果的な営業が可能となっています。これは競合他社の立場から見ていても、うまく機能しているように見えます。
たとえば、DCMでいえば国内だけで完結する国内市場における社債発行であればMUMSSが担当します。クロスボーダーの取引となる米国市場における米ドル債発行であれば、MSMSが引受営業を担当します。
MUMSSに在籍するカバレッジバンカーが顧客ニーズに応じて、MSMSとMUMSSのサービスを使い分けて提案を行っています。
モルガン・スタンレーMUFG(MSMS)の年収・難易度
年収は外銀の中でもトップクラスであり、競合他社との比較感を心配する必要はないでしょう。
それよりも自身が所属する部門・部署、特に個人のパフォーマンスが影響する割合が大きいです。納得感のあるボーナスを払わないとこの人は辞めてしまうかもしれないと上司に思われるかどうかがポイントです。
モルガン・スタンレーはグローバルに活躍できる環境が整っており、入社の難易度は外銀の中でも極めて高いと言えます。
ESや面接対策は過去の事例などを見て入念に準備をしてください。
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