スイスの歴史ある投資銀行および金融グループであるUBSについて解説します。
UBS Group AGの特徴・歴史
UBS Group AGはその源流となる銀行が誕生したのは1860~1870年代となり古い歴史があります。
スイス・ユニオン銀行とスイス銀行コーポレーションが合併してUBSになるのが1998年です。
スイス・ユニオン銀行の前身となるウィンタートゥール銀行は1862年に設立され、スイス銀行コーポレーションの前身となるバスラー銀行は1872年の創業です。
その後、UBSは1990年代にスイス国外の米オコナー&アソシエ イツ、英SGウォーバーグ、米ディロン・リードを買収することで国際的な金融機関となり、グローバル市場での存在感を一気に高めます。
秘匿主義:スイス銀行法第47条
スイスの銀行は徹底した守秘義務・秘匿主義で知られます。顧客の情報は相手がだれであっても明かさないイメージです。
スイスの銀行法第47条は、銀行の顧客に関する情報の漏えいはたとえ公益に資する場合でも刑事犯罪に当たるとする。2015年の改正で情報を受け取った側、つまり内部告発者やこれから起こりうる不正行為を報じたジャーナリストも処罰の対象となった。
スイス議会、銀行秘密の見直し「不要」 動議を否決 – SWI swissinfo.ch
このようにスイスの銀行は国家権力であっても顧客情報は厳格に守ることで知られ、世界中の貴族階級や富裕層の資金を集めてきました。ただし、47条には例外規定があり犯罪捜査に関しては公的機関への報告義務が秘密義務よりも優先されます。
世界各国の独裁者や犯罪者がスイスのj銀行口座を利用していると言われており、現在では口座情報を各国税務当局に開示するように方針が変わってきており、従来の秘匿主義は崩れつつある状況です。
UBSの事業構成
UBSではGlobal Wealth Management、Personal & Corporate Banking、Asset
Management、Investment Bankの4つの事業部門で構成しています。
UBSのGlobal Wealth Management部門
2万人を超える従業員が米州、欧州、中東、アジア地域の富裕層に対して資産を維持・増加させていくテーラーメイドのアドバイス、専門知識、ソリューションを提供しています。
富裕層ビジネスの成長が著しい地域である米国とアジアにおいて事業が拡大しており確固たる地位を築いています。コアとなる顧客層はUltra High Net Worthと呼ばれる超富裕層です。
プライベート市場(私募市場)のプロダクトも顧客に提供しており、プライベート・エクイティ・ファンド、ヘッジファンド、不動産などにも投資できます。またデジタル化も進めており、利便性の高いプラットフォームの提供も行っています。
UBSのPersonal & Corporate Banking部門
スイスでNo.1のユニバーサルバンクとして個人及び企業の顧客に対して包括的な金融サービスを提供しています。決済、預金、カード、オンライン・モバイル・バンキング、投資・退職金運用などライフサイクルに応じた幅広いサービス・メニューをそろえています。
事業会社や機関投資家がキャピタルマーケットや為替関連のサービスを求める場合にはInvestment Bank部門と連携してサービスを提供します。またAsset Management部門とポートフォリオ管理に関して連携することもあります。
基本的にはスイス国内の顧客を対象にサービスを提供する部門です。
UBSのAsset Management部門
グローバルに1.1兆米ドルの資産の投資運用管理を行っている部門です。機関投資家、金融仲介業者、Global Wealth Management部門の顧客に対して伝統的資産からオルタナティブ投資に関する運用管理サービスを提供しています。
株式、債券、ヘッジファンド、不動産、私募市場、インデックス運用、オルタナティブ・ベータ戦略、ETFなど多種多様な商品を取り扱っています。
またサステナブル・インパクト投資は重点エリアであり、サステナビリティ・ゴールと投資戦略を逃走したソリューションにも注力しています。
UBSのInvestment Bank部門
Investment Bankは、企業や機関投資家などの顧客に対して、資金調達、投資、リスク管理などのサービスを提供しており、Global BankingとGlobal Marketsの2つのディビジョン(Division)で構成されます。
Global Bankingは公募・私募市場における資金調達や戦略的なM&Aなどの企業戦略アドバイスを提供しています。
Global Marketsは世界中の市場における金融商品、例えば株式、株式関連、為替、レーツ(金利商品)、クレジット、貴金属の円滑な売買、リスク・流動性の管理を提供しています。
またリサーチ業務では49の国の3,000を超える銘柄をカバーしているのが強みとなっています。
また市場がESG投資にシフトしていく構造的な変化を受けて、2021年にGlobal ESG Advisoryチームを発足させ企業戦略や資金調達に関するアドバイスを行っています。
Investment Bank部門は30を超える国でビジネス展開しており、米州、アジア・パシフィック、EMEA(欧州中東)、スイスの4地域がコアとなっています。
このうち、米国は世界最大の投資銀行ビジネスのフィープールがあり、マーケットシェアの拡大を目指す戦略地域と位置付けています。またアジア・パシフィックは市場全体の国際化と中国の成長を受けて今後もプレゼンスの強化を目指していきます。
UBSによるクレディ・スイス(Credit Suisse Group AG)の買収
2023年6月12日、UBSによるクレディ・スイスの買収が正式に完了しました。
クレディ・スイスはチューリッヒに本店を置くグローバルな総合金融グループで、投資銀行、プライベートバンク、アセットマネジメントなど手掛けるユニバーサル・バンクでした。
1856年にチューリッヒで設立された歴史ある金融機関であり、1988年には米大手投資銀行のファースト・ボストンを買収しています。
2023年3月に米地銀が相次いで破綻すると信用不安が銀行セクター全体に広がり、クレディ・スイスについても資金繰りが懸念される状況となります。スイスの中央銀行が介入する事態となりましたが、最終的に当局の仲介の下でUBSが救済合併することとなりました。
UBSの日本における展開
日本では以下のエンティティを通じて事業展開を行っています。
エンティティ | 事業内容 |
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UBS証券 | 投資銀行 |
UBS銀行東京支店 | 商業銀行、プライベートバンク |
UBSアセット・マネジメント | 資産運用 |
UBSジャパン・アドバイザーズ | 不動産の資産運用 |
UBS SuMi Trustウェルス・マネジメント | 資産運用(富裕層) |
UBS証券の強み
UBS証券は日本においてフルラインでの投資銀行サービスは提供していませんが、自社の強みに特化した戦略を徹底しています。
特定のインダストリーに強いバンカーがM&AやECM、特に転換社債(CB)の案件などで活躍しています。優秀な上司、先輩に師事ししっかりと案件をこなしていけば、実力が身につく環境があります。
UBS証券の入社難易度・年収・給料・激務度
プロジェクトに入るとジュニアバンカーは自分だけということが多くあると思います。顧客のインダストリーや案件の種類にかかわらずなんでもこなさないといけないため、仕事はかなり激務であることを覚悟してください。
M&Aから資金調達までなんでも行うため、特にジュニアバンカーのうちのラーニングカーブは極めてスティープであると言えます。
なんでもこなすことのできるタフな人物が求められるため、入社難易度は高いと言えます。ジュニアバンカーの仕事を着実にこなしパフォーマンスが良ければ、待遇面は相応によいと言えます。