ここでは外銀の中で米系5社の投資銀行部門について、特色などを説明しますが、まず外資系金融機関の事業が日本でどのように展開されているかを見ていきます
外資系金融機関における日本での事業展開
外資系金融機関は日本の法令やビジネス慣行に合わせて3つの会社組織を設立していることが多いです
ざっくりまとめると、こんな感じです
名前の例 | 業務内容 | JPモルガンを例にすると、 |
---|---|---|
〇〇証券株式会社 | ・主に投資銀行業務を担当 | JPモルガン証券株式会社 |
〇〇アセットマネジメント株式会社 | ・主に資産運用業務を担当 | JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 |
〇〇バンク・東京支店 | ・主に商業銀行業務を担当 | JPモルガン・チェース銀行東京支店 |
投資銀行業務を行う”〇〇証券”はここで解説するすべての金融機関が日本で設立していますが、資産運用業務や商業銀行業務はすべての金融機関が日本で行っているわけではありません
例えば、シティグループは投資銀行業務と商業銀行業務は行っていますが、資産運用業務は行っていません。またモルガン・スタンレーは投資銀行業務と資産運用業務を行っていますが、商業銀行業務は行っていません
会社が異なると基本的に仕事上での関わりはほとんどないと考えてよいです
それでは金融機関ごとに投資銀行業務にフォーカスを当てて見ていきましょう
ゴールドマン・サックスの特色
1869年にユダヤ人マーカス・ゴールドマンが手形買取を始めたのに始まり、1882年に娘婿のサム・サックスを招いてゴールドマン・サックス(GS)を設立したのが始まり
- 政府部門とのつながりは強い。過去の米政権において複数回、財務長官を輩出している
- トップセールスに強い会社。軍隊的な組織であり日本企業以上に日本的
- やること、やらないことの線引きが明確。規模の小さい案件は追いかけない
- M&Aや自己投資部門が全体をけん引
- GS新卒はあまり同業他社には転職しないイメージ。やめる場合は違う仕事をする人が多い
就職での難易度は相当高いゴールドマンです
- 職場は例えるなら戦場であり一瞬でも気が抜けない。ほんとうに寿命が縮まる
- 特に後ろから味方に撃たれないように気を付ける必要がある
- ここで働くことが幸せにつながるのかどうか疑問に思う
最近では一部、商業銀行業務に進出していますが、基本的に投資銀行業務が中心の外銀です
モルガン・スタンレーの特色
1933年の米グラス・スティーガル法によって、旧JPモルガンの投資銀行部門がモルガン・スタンレー(MS)として独立。以来、証券業務を中心に事業が発展
リーマン・ショックを契機に三菱UFJフィナンシャルグループが筆頭株主となった
- モルスタの持つグローバルネットワークを三菱UFJフィナンシャルが持つ顧客ネットワークに提供。2社が共同することで投資銀行業務を展開
- M&AやECMなどの投資銀行業務に強く、ブランドイメージが良い
- 不動産投資銀行部門も日本ではプレゼンスを発揮
MSはGSとともに米投資銀行業界をリードする存在です
- MUFGとの連携はよいが、仕事の進め方や人間関係がやっぱり複雑
NY本社はウォールストリートではなく、タイムズスクエアにあります
JPモルガンの特色
JPモルガン・チェースは、GSやMSと異なり商業銀行が母体となっている金融グループであり、その投資銀行部門がJPモルガンである
日本ではJPモルガン証券に加えて、JPモルガン・チェース銀行としても営業を行っている
- アメリカの商業銀行を母体とする投資銀行の中で安定感は抜群、堅実なブランドイメージ
- JPモルガン・チェース銀行が深い取引関係を保持する日本企業も多く、証券ビジネスとのシナジーが発揮できている
- そのため、日本の大半のグローバル企業とは接点を持っている
- 比較的、新卒が多いイメージ
商業銀行を母体とするアメリカの投資銀行の中では抜群のブランドと実績があり、就職・転職における難易度は一番高い
- よく言えば上品、悪く言うと控え目・おとなしいイメージがあるが、それでビジネスが取れている。それはそれでうらやましい
JPモルガンはもっともバランスがとれている金融機関のイメージです
シティグループの特色
シティグループは商業銀行を母体とする金融グループであり、個人向けの金融サービスにおいても日本を含めてグローバルに事業を展開。一時は世界で160を超える国と地域でビジネスを展開していた
2007年のリーマンショックにおける損失が大きく、世界中に張り巡らせたネットワークも重荷となり、その後はビジネスの縮小を余儀なくされており、日本においても個人向けビジネスからは撤退をしている
とはいえ、シティは世界のほとんどの国・地域とのビジネス拠点・支店網があり、現在でもシティグループの強みとなっている
- 世界中に張り巡らせたシティグループのネットワークは他の追随を許さないシティの強み
- 特に新興国でビジネスを行っている日本企業ほど、商業銀行としてのシティグループを頼りにしている
- リーマンショックまでは名実ともに商業銀行を母体とするアメリカの金融機関ではNo.1。規模が大きかったゆえにリーマンショックのダメージも大きかったがJPモルガンを猛追しているところ
シティはかつては日本でも個人向けに銀行業務を行っていました。シティバンク銀行で口座開設をすることもできました
- リーマン以降はJPモルガンに対して大きな差をつけられている
- グローバルなネットワークでは他の追随を許さないはずであり、今後の復活が待たれる
IBDにおいてM&A、ECM、DCMを希望する場合にはシティは十二分にあなたの実力を発揮できるプラットーフォームが備わっています
BofA証券の特色(旧メリルリンチ)
バンク・オブ・アメリカはアメリカの商業銀行を母体とした金融グループであり、バンカメ、あるいはBofA(ビーオブエー)の略称で呼ばれる。メリルリンチはGS、MSとともに、投資銀行業務を中心とする金融機関であったが、リーマンショックで事実上の破綻となり、バンク・オブ・アメリカに救済買収された
日本においては、1997年に山一証券が破綻しメリルリンチがその営業基盤を継承。2019年にはバンカメの投資銀行事業からメリルリンチの名前を外すこととなり、現在の名称となっている
- メリルリンチの時はGS、MSと並び、米三大投資銀行の一角として日本においても各セクターに強いバンカーがいた印象
日本ではBofA証券が投資銀行業務を担い、バンク・オブ・アメリカ・エヌ・エイが商業銀行業務を行っています
- 投資銀行業務における経営のバンカメ色が強まって以降はあまり目立たなくなってきている印象
- 商業銀行ではJPモルガン・チェース、シティグループが抜きんでている印象
投資銀行部門の基幹業務であるM&A、ECM、DCMはしっかりと行っており、グローバルにフランチャイズがあります
外銀の採用人数
投資銀行業務を担う証券会社の日本の社員数は700名から800名程度です
これには、オペレーション部門などのバックオフィス、IT・システム部門、人事・コンプライアンスなどのコーポレート部門の人員も含まれます
おそらく投資銀行部門(IBD)が100名程度、マーケット部門が150~200名程度といった感じと思います
少数精鋭の組織体制ですがいつでもアソシエイト、アナリストなどのジュニアは必要とされており、IBDとマーケットでそれぞれ毎年、5~10名程度の新卒を採用するイメージです。第二新卒を含む中途採用も行っています
日系金融機関と比べて組織が大きくないので採用する人数も極めて少なくなっています
グローバルCMS:外銀の商業銀行としての強み
外銀が強みとしている商業銀行業務を紹介しておきます
呼び方はいろいろありますが、グローバル・キャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)は外資系金融機関が強みとしているサービスです
グローバルに事業を展開している日本企業をイメージしてください。日本の本社ではすぐに使う必要のない余剰のドルが現金で眠っている一方で米国の現地子会社では仕入れ先にドルを払う必要があり、お金が足りないといったことが起こりえます
このような時に企業グループ内の資金管理や海外送金を効率的に行うサービスがグローバルCMSです
また海外送金も外銀の強みのひとつです
日本の銀行から例えば東欧の銀行にある口座に資金を移動させたいとします
この時、日本の銀行が東欧の銀行と取引関係がない場合、コルレス銀行と呼ばれる中継銀行を使って送金します。コルレス銀行が例えばシティグループであったときに、シティグループにある日本の銀行口座から資金をおろし、東欧の銀行に資金を入金させることで海外送金を行います
コルレス銀行は2-3つの銀行を間にかませることもあり、実際の海外送金はもっと複雑です
投資銀行業務とは直接関係ありませんが、東欧、中東、南米、アフリカなどグローバルにネットワークを持つ外資系金融機関はこのようなところでも強みを発揮しています
まとめ
米系投資銀行の主要5社について解説しました
日系5社も解説しているので参考にしてみてください