最近、みずほによる米国事業の強化に関するニュースのヘッドラインを見かけることが多かったです。
- みずほ証、米国で今期100人超採用へ-債券引き受けや株調査など(ブルームバーグ)
- みずほ証券の浜本社長、米国強化「25年度に人員3割増」(日本経済新聞)
- グリーンヒル買収で米投資銀強化、株引受10位内も=みずほ証社長(ロイター)
なぜ投資銀行は米国での事業を強化するのか、投資銀行業務における米国の重要性について解説していきます。
グローバルCIBビジネスは、みずほの注力ビジネステーマの一つ
みずほフィナンシャルグループの2022年度決算会社説明会(2023年5月18日)の資料で、新中期経営計画(23~25年)を発表しています。
新中期遺影計画の基本方針を定めており、注力するビジネステーマに以下の5つが挙げられています。
- 「資産所得倍増」に向けた挑戦
- 顧客利便性の徹底追及
- 日本企業の競争力強化
- サステナビリティ&イノベーション
- グローバルCIBビジネス
「資産所得倍増」に向けた挑戦は、簡潔に言うと資産運用業務の強化です。新NISA市場の規模が今後拡大していくことを踏まえ、みずほグループ全体で貯蓄から投資への資金の流れを促進していきます。またPayPay証券や楽天証券といった他社との連携も活用します。
顧客利便性の徹底追及は来店不要で利用可能なサービスやオンラインプラットフォームの強化などが想定されています。
日本企業の競争力強化は、大企業営業で培った知見・経験を中堅企業にも展開し、顧客企業同士の連携などを深めることで日本企業全体の競争力を強化することを企図しています。
サステナビリティ&イノベーションは、脱炭素化・資源循環型社会の実現に向けて、サステナブルファイナンスを始めとする資金供給体制の確立、脱炭素並びにサステナビリティ進展に伴う新ビジネス創出などを目指していきます。
投資銀行業務は、グローバルCIBビジネスに含まれます。
CIBとはCorporate &Investment Bankingの略であり、海外、特に米国では銀行業務と証券業務が分け隔てられることなく、事業が行われています。
証券業務におけるプライマリーとセカンダリー、銀行業務と証券業務の一体運営の推進をみずほではCIBモデルと呼称し、強化しています。
みずほフィナンシャルグループ 2022年度決算会社説明会・資料
日本では明確に銀行業務と証券業務は分けられていますが、米国ではCIBモデルが確立されています。
みずほは投資適格級(IG)のDCM業務では米国において相応の実績・基盤を構築できており、これを起点にしてNon-IG(ハイイールド)のDCMやECM、M&Aについても強化していく方針です。
米国はグローバルに見て、投資銀行業務に関する巨大なフィープールがあり、米国社債市場の引受手数料プールは2022年度対比で2025年度に向けて年率6%で成長すると見込まれています。
みずほ、米M&A助言のグリーンヒルを5.5億ドルで買収
2023年5月22日、みずほフィナンシャルグループは米M&Aアドバイザリー会社のグリーンヒルを5億5000万米ドルで買収すると発表しました。
みずほは2015年にも英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)が持つ北米の貸出債権を含む北米事業を買収しています。
海外ネットワークに劣る日系投資銀行はこれまでM&A案件において、外銀に後れを取ることが多かったことは否めません。
ですが、グリーンヒルの買収によって、米国を中心に被買収企業・売り手企業の情報が掘り起こし、ソーシングができるようになれば、だいぶ外資系との競争優位性も変わってくるのではないかと思います。
日系投資銀行の活躍の舞台は大きく広がってきている
わたしがアナリストのころは国際的な仕事をしたいと思ったら外資系投資銀行、外銀に行くのが一番早い選択でした。ですが今は違います。
みずほが積極的に海外展開を進めているように、日系投資銀行は海外で仕事をするチャンスは大きいです。
海外で働きたい人はみずほを含め日系も選択肢にいれることをおすすめします。
みずほ証券投資銀行部門の解説はこちらです。