大和証券は2023年11月7日、アイルランドの独立系投資銀行であるIBI Corporate Finance(IBI)の買収を発表しました。
IBIはアイルランドを代表する投資銀行です。これまで50年以上にわたりアイルランドを中心とした企業に対して、M&A、ECM、DCMのアドバイザリー業務を行ってきました。
IBIは大和証券の持つグローバルM&AアドバイザリープラットフォームであるDaiwa Corporate Advisory(DCアドバイザリー)に加わることとなります。
ここでは、GIB部門の中でもビジネスが拡大基調にある大和証券のM&A戦略について解説していきます。
アイルランド・IBIコーポレートファイナンスの買収
大和証券は2023年11月にIBIの買収を発表し、100%子会社としました。買収金額は非公表ですが、約16億円超とみられると報道されています。海外のM&A助言会社の買収は2018年のスペインのモンタルバン社を買収して以来、5年ぶりです。
IBIの社員数は28名であり、本社はダブリンにあります。金融、ヘルスケア、インフラなどに強みがあり、1件当たり5億米ドル以下の中小規模のM&A案件において実績があります。
大和証券はIBIの買収を通じてアイルランドと欧米企業の間のクロスボーダー取引を増やしていき、M&A関連収益のテコ入れを目指します。
ミッドキャップM&A市場でのトッププレーヤーを目指す大和証券の戦略
大和証券は中期経営計画の中でミッドキャップM&A市場におけるトッププレイヤーを目指すとしており、直近では2019年にイタリア、2021年にタイ、2022年にベネルクスに拠点を解説しています。2023年11月時点でアジア、欧州、米国の23拠点に約700名の人員を配置しており、M&Aを中心としたアドバイザリー業務を展開しています。
足元、M&A関連収益は堅調に推移しており、事業再構築、業界再編、成長戦略を求める顧客ニーズに合わせて、ミッドキャップM&Aにフォーカスしている大和証券の先行きのM&Aパイプラインは堅調に推移する見通しです。
特に成長の活路を求めるグローバル企業を中心にクロスボーダーM&Aは活況が見込まれるほか、事業ポートフォリオ・サプライチェーンの見直し、経営統合、PEファンドにおける投資・売却の相談は多くパイプラインは順調に積みあがっています。
M&A関連収益は、欧米のM&Aブティックハウスの買収が寄与し、467億円まで拡大しています。今後も陣容を拡大させ2030年に向けて、収益700億円以上を目指す計画です。
M&A関連収益の推移
2030年に目指す姿
2023年度経営戦略説明会 資料
M&Aビジネスにおいて世界最大のマーケットは米国であり、米国の事業の強化は今後も最優先である他、大和証券の強みである欧州地域でも競争力を維持し、収益性を向上支えていく方針です。
PEファンドとのビジネスを強化するほか、インフラ、インダストリアルズ、コンシューマー、ヘルスケアが重点セクターです。
大和証券では、ミッドキャップは5億米ドル未満、ラージキャップは5億米ドル以上で定義しています。
グローバルのM&Aフィープールを見ると、ミッドキャップM&Aはラージキャップと比較してフィープールの落ち込みが緩やかであり、底堅く推移しているのが特徴的です。
グローバルM&Aフィープール推移
2023年度経営戦略説明会 資料
大和証券は今後も有力なブティックM&Aハウスの買収は積極的に検討していき、インオーガニック成長を目指していく方針です。