2023年上期の3メガ銀行にグループの決算が出そろいました。国内および海外含めて金利上昇による貸し出しの利ザヤの改善に加えて、海外事業も円安効果もありますが好調でした。
SMFGは今期の純利益が10年ぶりの最高益を更新する見通しであり、みずほFGおよびMUFGも好調な収益が見込まれます。
ここでは3メガグループによる海外で展開する投資銀行業務について解説していきます。
SMFGの投資銀行業務の海外展開
SMFG（三井住友フィナンシャルグループ）は、米独立系証券会社のジェフリーズに対する追加出資し、持ち分を最大で15％にすると2023年4月に発表しています。
SMFGはグローバルCIB（Corporate and Investment Banking）を強化し、米国事業をさらに拡大・深化させる方針です。
米国では、Jefferiesとの連携は着実に進展しており、各領域で案件の獲得に成功しています。また、リテール分野では米国デジタルバンクを2023年7月に開業しており、米国事業の中長期的な成長ドライバーとしての役割を果たす見込みです。
出所：SMFG 2023年度上期 投資家説明会資料
米国市場はSMBCブランドで一定程度の開拓を達成できています。ジェフリーズとの提携をきっかけにECMやM&Aの分野で一定の地位を確立していくのが、SMBCの現在の戦略です。
また、SMFGは英国において銀行業務と証券業務を一体運営すると2023年7月に発表しています。日本国内においては銀行業務と証券業務は明確に線引きがなされていますが、欧州ではユニバーサルバンクという概念の下で、ひとつの金融機関が日本でいうところの銀行業務、証券業務、資産運用業務など様々な業務をワンストップで事業展開しています。
このユニバーサルバンクを欧州で展開すると決めたのがSMFGです。
みずほFGの投資銀行業務の海外展開
みずほFGのIBD業務の海外展開の歴史は2015年2月にRBS（英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド）の32億米ドルの貸出債権を買い取ったことに始まります。
アメリカでは銀行が行う貸出業務と証券が担う社債の引受業務は密接にリンクしています。銀行業務におけるローンでお世話になっているので、社債の主幹事でローンに報いるといったことが行われています。
なので、米国ではローンに代表される銀行業務を行う投資銀行がDCMのリーグテーブルでは上位に来る傾向にあります。
出所：All data, unless otherwise stated, sourced from the Bond Radar Ltd Data Wizard and API
BofA、JPM、Citigroupのようにローンに代表される商業銀行業務を担う外銀が1位から3位を占めています。4位のモルスタ、5位のゴールドマン・サックスは商業銀行業務は基本的には行っていません。
米国における外銀である英バークレイズが7位、日本の金融機関であるみずほが8位を占めていることは特筆に値します。米国市場はバランシートの負担の大きいローンを顧客に提供したら、社債で返してくれる極めてビジネスライクなマーケットです。
みずほはRBSの貸出債権の買収をきっかけに米国における投資銀行業務においてもDCMを中心に飛躍的に業務を拡大しています。
2023年には、みずほはM&Aアドバイザリーの米グリーンヒルを買収しました。DCMからM&Aの分野に投資銀行業務を拡大させていく方針です。
みずほはECMの分野ではソフトバンクグループ傘下の英半導体設計大手アームの米国上場において主幹事4社の一角を務めました。
確立されたDCM業務に加え、ECMおよびM&A分野においても、みずほは事業を拡大させているところです。
MUFGの投資銀行業務における海外戦略
MUFGでは投資銀行業務の海外展開では、基本的にはモルガン・スタンレーとの提携関係に依存しているように見えます。MUFGとモルガン・スタンレーの提携関係が15年目を迎える2023年に「アライアンス2.0」を打ち出しています。
出所：2023年度中間期決算投資家説明会 資料
MUFGだけが自社ブランドではなく、モルガン・スタンレーに依存した投資銀行業務における海外戦略を展開しています。顧客から見ると、MUFGに依頼すればモルガン・スタンレーのネットワークも使ったアドバイスを提供してくれるため極めて有効と言えます。
一方で、MUFGで働く立場で考えたときに、グローバルなプロジェクト、クロスボーダーの案件の場合には、自分の手を離れてモルガン・スタンレーにお願いすることとなり、最後までプロジェクトを自分の手で完成させることができない可能性には注意する必要があるでしょう。
