2023年4月、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、傘下の三井住友銀行(SMBC)が米証券ジェフリーズの持ち分を最大15%まで引き上げると発表しました。
SMFGの米国における戦略について解説します。
2021年7月、SMFGが米Jefferiesとの戦略的資本・業務提携を発表
米国では銀行と証券の業務が明確に分離されておらず、SMFGは銀行と証券の両方の業務を含むコーポレート&インベストメントバンキング(CIB)分野を強化すべく、米ジェフリーズと2021年7月に戦略的資本・業務提携契約を結びました。
特に以下の3つの分野での協業が提携の狙いです。
- 米国非投資適格(Sub-IG)企業向けビジネス・レバレッジドファイナンスの協働
- 日本関連クロスボーダーM&A
- 米国ヘルスケアセクター
この提携を通じてSMFGは最大4.9%のジェフリース株式を市場から取得する予定となっていました。
2023年7月、三井住友銀行がジェフリーズの持ち分を最大15%まで引き上げ
2023年7月に、この提携を一層強化すべく、主に米国における投資適格の大企業を対象に、M&A アドバイザリー業務およびエクイティ、デットキャピタルマーケッツ業務における協業分野を拡大させました。
米国における事業は以下のように整理されることとなりました。
- 米国におけるレンディング(貸付・融資)・・・三井住友銀行
- デットキャピタルマーケッツ業務・・・SMBC日興証券
- M&Aおよびエクイティキャピタルマーケッツ業務・・・ジェフリーズ
この新体制により、米国の投資適格企業に対してはジェフリーズの投資銀行カバレッジと三井住友銀行のカバレッジが共同して顧客をカバーする体制となります。
これまでSMFGはジェフリーズ株式を約4.5%保有していましたが、この提携を通じて最大15%まで経済持ち分を引き上げる予定と発表されました。
銀行が行う融資と証券が行うDCM業務は関連性が強く、銀行系証券は自然とDCM業務には強い傾向があります。一方でECM業務やM&Aは特にクロスボーダーとなると自力で業務を行うことは難しいです。
SMFGおよびSMBC日興証券にとって今回のジェフリーズとの提携は弱点を補強する戦略であると言えます。あとはSMBC日興証券のバンカーがうまくジェフリーズを使いこなすことができるかどうかにかかっていると言えるでしょう。
2022年度決算説明資料
米国は投資銀行にとって最大のフィープール
米国市場は世界の金融機関にとって世界最大、かつ安定的なマーケットです。
特に投資銀行ビジネスのフィープール(M&Aや資金調達に関わる手数料の合計)が世界の中で最も大きいため、日本を含む世界中の金融機関が米国での業務拡大を目指しています。
2022年度決算投資家説明資料
市場規模が大きく今度も高い成長ポテンシャルを有する米国に経営資源を集中していく模様です。
投資銀行での活躍を目指すみなさんも米国で働く機会も多いと思いますし、また日本にいながらも米国を相手方とするクロスボーダーの案件に携わる機会が今後も増えていくと思います。
SMBC日興証券の解説は以下を参考にしてください。