投資銀行は引き続き人気のある業界であり、就活や転職での志望先で高い順位にあります。
入社の難易度は高く入社後は激務が続きますが非常に魅力的なキャリア形成が可能です。
投資銀行に入るルートは3つあります。
- 新卒
- 中途採用
- MBA
この記事では投資銀行に入る方法を解説していきますが、まずは投資銀行とは何かを見ていきましょう。
投資銀行とは?
投資銀行は簡単に言うと証券会社のことです。
投資銀行は、投資銀行部門とマーケット部門が稼ぎ頭であるフロントの二大部門であり、花形部署です。
投資銀行部門(IBD)
投資銀行部門は大企業を相手に社債発行、株式発行等による資金調達の提案や事業買収などのM&Aの提案を行っています。
IBDはセクター毎に分かれているカバレッジ、プロダクトごとにDCM、ECM、M&Aと組織が分かれています。
ここで挙げた4つの部署は投資銀行の根幹を成す業務であり、基本的にはどこの投資銀行もこの機能を抱えています。会社によってはこの4つの部署以外にも部署を抱えていることがあり、例えば証券化などアセットファイナンスの部署が挙げられます。
投資銀行で働いている人をインベストメント・バンカーと言いますが、基本的には投資銀行部門で大企業相手の仕事をしている人を意味します。
マーケット部門
債券・為替・株式などの市場性のある商品を扱っています。銀行・保険・年金などに代表される機関投資家が顧客であり、投資家の売買ニーズに応えることで流動性を提供しています。
マーケット部門は大まかに言うと、セールスとトレーダーの2種類の仕事に分けられます。
セールスは担当の機関投資家をカバーし、顧客からの売買注文を受け付けます。セールスは売買注文を素早くトレーダーにつなぎ、トレーダーはすぐにプライス(値段)を返します。
投資家は通常、同時に複数の証券会社に対してプライスを聞きに行っており、投資家は最も良いプライスを出したところと注文を約定します(売る場合は最も高い値段を、買う場合は最も安い値段を提示した先と取引を行います)。
マーケットが開いている取引時間内を「場中(ばちゅう)」と呼びます。
マーケット部門は数字の間違いが損失に直結し、顧客からの信頼を失いかねない仕事です。場中はかなり神経を使う仕事ですが、資料を作るために残業するようなIBDみたいな仕事は基本的にはありません。
リサーチ部門・リテール部門・コーポレート部門
投資銀行部門、マーケット部門のほかにもリサーチ部門、リテール部門、コーポレート部門などがあります
リサーチ部門は投資家に対して、マクロ経済、株価・金利動向、個別株式、個別クレジットに関して見解を示す部署です。エコノミスト、アナリストと呼ばれる人がいる部署になります。基本的には学者肌の人が目指す職種です
リテール部門は、個人投資家に対して証券サービスを提供しています。日本の大手証券会社は日本国内に支店網を持っており、個人投資家に対して営業を行っています。投資銀行部門が大手企業の社債や株式を引受けて、個人投資家に販売を行うこともあります
コーポレート部門は、オペレーション、人事、法務、コンプライアンスなどを総称した呼び方です。会社として組織を維持するのに必要な部署が集まっているイメージです。基本的にはお金を稼ぐ部署ではないので、IBDやマーケット部門がフロント・オフィスと呼ばれるのに対して、ミドル、あるいはバックオフィスと呼ばれます
投資銀行部門はプライマリー、マーケット部門はセカンダリー
投資銀行部門はプライマリービジネスであり、発行市場の仕事です。
マーケット部門はセカンダリービジネスであり、流通市場の仕事です。
車に例えて話すと、プライマリー市場は新車、セカンダリー市場は中古車が販売されているイメージです。
プライマリー市場では発行体が証券会社に依頼をして一斉に投資家に対して需要調査を行い、条件決定を行います。一度、条件決定が行われると、セカンダリー市場に移行し、それぞれの投資家が必要と判断すれば流通市場で売却もするし、買い増しすることもあります。
自動車で例えましたが、基本的に自動車は時間の経過や使用により価値が減少しますが、社債や株式などの金融商品は時間の経過が価値の低下につながるわけではありません。
この点が金融商品の大きな特徴です。
投資銀行と銀行はどう違うのか?
投資銀行は銀行なのかとよく聞かれます。
日本で銀行というと一般には商業銀行のことを意味します。3メガと呼ばれますが、三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行が商業銀行です。
この意味では、投資銀行は銀行、商業銀行ではありません。商業銀行と投資銀行は意味するところは大きく異なり、投資銀行は証券会社と考えてよいです。
ざっくりまとめると以下の通りです。
ともに銀行と名のつくものの、ビジネスの成り立ちが異なるので商業銀行と投資銀行では大きくカルチャーが異なります。
カルチャーの違いから、商業銀行は農耕民族と言わたりする一方で投資銀行は狩猟民族と呼ばれたりもします。
またストックビジネスの商業銀行とフロービジネスの投資銀行が具体的にどう異なるのか、ある企業が100億円の資金調達をする場合を例に解説します。
IBDで働くメリット・デメリット
IBDで働くメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット①:コーポレート・ファイナンスの実務知識の習得
若手のうちに、コーポレートファイナンスに関する実務経験を徹底して身につけられるのがIBDで働くメリットです。
財務モデルの作成を通じて、今後の事業戦略や資金調達のシミュレーションを行います。BS、PL、CFの財務3表をエクセルシート上で連動させてモデルを組み立てます。
エクセルで財務モデルを作るのに、会計の知識、企業価値の算出方法、税務の知識など様々なことを知っておく必要があります。
メリット②:金融業界におけるキャリアパスのオプションが広がる
投資銀行を中心とした金融業界は転職などの人の動きも活発であり、ジョブ型の人材マーケットが形成されています。
コーポレートファイナンスの知識はポータブルスキルであり、若手のうちにスキルと実務経験を身につければ、投資銀行以外にもPEファンドや独立系・ブティック型M&Aファームなど、様々なキャリアパスが展望できます。
金融業界でも伝統的な銀行などはメンバーシップ型会社組織であり、就職ではなく就社の感覚です。
必要な知識・スキル・経験を若いうちに身につけたいと考えるなら、ジョブ型の会社で働くことが重要です。自分の未来を自分で切り開くことができます。
メリット③:給与面の待遇が他業界対比で良い
金融業界の中でも投資銀行が最も払いがよいと思います(知る限りですが)。
外資系と日系を比べると外資系の方が待遇がよいです。優秀な若手ほど外資系に引き抜かれたりするので、日系でも人材流出防止のため、待遇を改善しています。
グローバルに人材獲得競争をしている外資系が給与面でもリードしており、日系も給料を上げてきています。
デメリット:激務すぎる
忙しさがハンパなく激務すぎるのがデメリットです。
そのため、プライベートの時間がなく、友達が減っていきます。
給料はよいと書きましたが、たまの休みの時に散財してしまうので、意外とお金が貯まらないです。
投資銀行に向いている人材とは?
まずはコミュニケーションスキルです。
みんな忙しいので、ジュニアバンカーはシニアバンカーからの指示を「1聞いて10理解する」が求められます。日本的かもしれませんが、言葉の行間を読み相手の本音を探るスキルは、シニアバンカーになっても顧客とのコミュニケーションで求められます。
次に肉体的・精神的なタフネスです。
投資銀行の仕事では突発的な依頼に短時間で対応することがよくあります。短時間のうちに正確なアウトプットを出す必要があり、またその依頼は深夜や週末になることもあります。肉体的にも精神的にもタフであることが求められます。
最後に地頭の良さです。
念のために言っておくと、頭のいい人が稼げるのではありません。地頭がよくないと競争の舞台にも立てないイメージです。それぐらい投資銀行の提案内容は各社でほとんど差がなく、地頭のいい人が集まって案件獲得を巡って競争しているというのが現場感覚です。
IBDへの入り方
具体的な入社ルートについて解説します。
新卒から投資銀行に入社
一番よくあるルートですが、競争は激しく倍率も高いです。まずはインターンを獲得するのが目標となります。
投資銀行に限らず関連の業界や会社でインターンができるとアピールになります。バイサイドでインターンをやったけど、やっぱり自分はセルサイドでやってみたい、など自分を売り込むためのストーリーを作りこむのに役立ちます。
新卒での入社はとにかく倍率が高いです。書類選考を突破して複数回の面接に合格する必要があります。
倍率が高いにも関わらず、入社後の2-3年で辞める率も高いです。
原因はいくつかあって、
- 偏差値の高い大学を志望した大学受験のノリで難易度が高いからととりあえず投資銀行を受ける学生が多い
- 仕事の厳しさはやってみないと分からず、実際にやると意外と単調でつらい
- 就活に関する情報がとにかくあふれていて、本当に大事な情報にたどりつけていない。そのため入社前と後のギャップが大きい
インターネットのない時代に就職活動をした世代としてはこのように現状を感じてます。
中途採用で投資銀行に転職
投資銀行の中途採用は比較的頻繁にあります。投資銀行における人材の回転率は比較的高く、恒常的に人材は不足しているからです。
銀行(メガバンク)からの転職
メガバンクからの投資銀行への転職、特に外資系投資銀行への活躍の地を移す人はよく見受けられます。メガバンクは教育体制も充実しており、一通りの知識も兼ね備えているので、採用する側も一定の安心感があります。
- 大企業・法人営業担当
- 市場取引・デリバティブ営業担当
- 海外勤務の経験者
このような経験を積んでいる人が転職後も活躍しているイメージです。
証券リテールからの転職
証券リテールから日系投資銀行への転職は比較的多く、また成功している人もよく見かけます。
投信販売や資金導入などで毎日詰められる日々を送っていたおかげで精神的に鍛えられてる人が多く、ホールセールビジネスである投資銀行部門に移っても、活躍しています。
会計系ファーム・会計バックグラウンドからの転職
外資系投資銀行で比較的よく見かけることが多いです。会計のバックグラウンドがあることは投資銀行ビジネスでは即戦力であり、活躍している人が多くいます。
総合商社からの転職
総合商社出身の方の外資系投資銀行で活躍しています
総合商社での事業投資の経験は投資銀行プロパーの人には経験できない貴重なスキルです。投資銀行では第三者としての顧客アドバイスが主となりますが、総合商社で主体的に投資を行っていた経験というのは強みです。
地方銀行からの転職
地方銀行の方は日系投資銀行で活躍しています。
IBDのビジネスで、株式での資金調達を担当するECMと債券での資金調達を担当するDCMがありますが、やはり銀行バックグラウンドの方は金利系の商品への理解が早いため、DCMで活躍している人を多く見かけます。
事業会社の経営企画・事業開発からの転職
そもそも母数が多くないですが、事業会社の経営企画や事業開発で活躍していた人が日系投資銀行・外資系投資銀行の両方で活躍しているケースがあります。
投資銀行のサービスを使っていた側から、投資銀行でサービスを提供する側にジョブチェンジするイメージです。
MBAから投資銀行に入社
海外MBAに行かれてる人はボストンキャリアフォーラムに参加して、それぞれの投資銀行との面接を行っていくことになります。
新卒の場合と同様にMBAのリクルーティングもかなりの激戦です。採用する時期が決まっていて、プロセスも確立されているので、採用する企業もそれなりの人員とコストをかけて力を入れています。
学校側はMBAプログラムでキャリアを1から作り変えることができるかのように宣伝していることもありますが、過度に期待しないことも大事です。
まとめ:新卒よりも中途採用の方が投資銀行には入りやすい
投資銀行は今では人気の就職先になってしまいました。そのため募集人数を大きく上回る学生が応募してきており、かなりの倍率となっています。
学生時代の就職活動で自分に相応しい仕事を選択することはかなり難しいのではないかと私は思っています。
新卒で投資銀行に入社した人は途中でやめてしまいがちなのに対して、中途採用の方は長く続ける人が多いです。
中途採用でも投資銀行で働いて活躍するチャンスは大きいと思います。