よく聞かれるモルガンスタンレーMUFG証券(MSMS)と三菱UFJモルガンスタンレー証券(MUMSS)の違いについて徹底解説します。
MUMSS(マムス・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)とは?
三菱UFJモルガン・スタンレー証券を英語表記にすると、Mitsubishi UFJ MorganStanley Securitiesであり、頭文字をを取って、MUMSS(マムスと読む)と呼ばれたりします。
MUMSSはMUFGグループの中核総合証券会社として、三菱UFJ銀行や三菱UFJ信託銀行と重要な事業会社となっています。MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)の下に三菱UFJ証券ホールディングスがぶら下がり、更にその下にMUMSSとMSMS(モルガンスタンレーMUFG証券)がぶら下がるストラクチャーとなっています。
その他にも資産運用会社やカード会社なども傘下に収めています。
出所:MUFG 会社概要
もともとは三菱UFJ証券という名前でしたが、モルガン・スタンレーとの提携を契機に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券と名称を変更することとなります。
MSMS(モルガン・スタンレーMUFG証券)とは?
モルガン・スタンレーMUFG証券を英語表記にすると、Morgan Stanley MUFG Securtiesとなり、頭文字を取って、MSMSと呼ばれています。
モルガン・スタンレーは、米国におけるグラス・スティーガル法の施行により、モルガン商会より債券引受部門が独立し、1935年にモルガン・スタンレー・アンド・カンパニーが設立されたのが始まりです。
グラス・スティーガル法とは、1933年に制定されたアメリカ合衆国の連邦法であり、1929年に始まった世界恐慌の反省から、銀行業務と証券業務を分離することが定められました。米国では1999年に規制緩和・自由競争を推進する観点から同法は廃止されていますが、日本においては2024年現在においても銀行業務と証券業務は明確に分離されています。
1941年にニューヨーク証券取引所の会員権を取得し、モルガン・スタンレーは順調に事業を拡大していきます。1971年にはセールス&トレーディング業務、M&A業務に参入し、本格的に投資銀行業務に進出することとなります。
日本においては、1970年に東京駐在員事務所を開設、1984年には東京支店に格上げされます。以降、モルガン・スタンレーとして日本における業務を行ってきましたが、MUFGとの提携を契機に日本ではモルガン・スタンレーMUFG証券に名称を変更し業務を行っています。
モルガン・スタンレーとMUFGの提携・アライアンス関係
モルガン・スタンレー(MS)は米国を代表する投資銀行であり、1933年に制定されたグラス・スティーガル法により旧JPモルガンの債券部門が分離され、設立されました。
2007年の世界的な金融危機でサブプライム住宅ローン関連で大きな損失を被ります。2008年9月には金融持株会社へと転換し、同年10月に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と資本提携し、MUFGがグローバルな投資銀行業務の強化を目的として、MSに90億米ドルを優先株の形で出資します。
以来、投資銀行業務における協働を中心にウェルスマネジメントや資産運用の領域にも連携を拡大させ、マネジメント間の連携や人材交流を促進し提携発展に向けた取り組みを行っています。
2009年に米国でコーポレートファイナンス業務の合弁会社を設立、2010年に日本では三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUMSS)とモルガン・スタンレーMUFG証券(MSMS)が設立されます。
2011年に取締役の派遣を2名に増員し、普通株へと転換されます。2015年にはウェルスマネジメント、資産運用の領域における提携が拡大されます。
MSとMUMSSの投資銀行業務における提携・協働
日本では投資銀行業務の分野においてMUMSSとMSが連携して業務展開を行っています。MUFGの日本における強固な顧客基盤に対して、モルガン・スタンレーが持つM&Aや株式・債券の引受・販売のグローバル・ネットワークを提供することで、顧客のニーズに応えています。
MUFGとモルガン・スタンレーおよび証券子会社の日本における出資関係は以下の通りです。
出所:二社体制の仕組み
なお、MSMSの議決権比率はMUFGが49%、MSが51%となっています。
日本だけでなくグローバルにECMやM&Aでの協働を行っており、米国におけるNon-IG領域でのローン貸出・債券引受ビジネスや、アジアを中心にスタートアップ等のIPO連携も強化しています。
資産運用の分野ではモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントとの共同アプローチで三菱UFJ信託銀行あるいは三菱UFJ国際投信が資産運用機能を提供する答申を設定する動きも行っています。
2008年のMUFGとモルガン・スタンレーの戦略的資本提携
MUFGが米モルガン・スタンレーに総額90億米ドルを優先株で出資したのは2013年のことです。当時の為替レートで約9,000億円の出資であり、2013年度以降の10年間でMUFGへの純利益に貢献した金額は累計で2兆1,000億円強であり、すでに出資額の2倍以上のリターンとなっています。
2023年度中間決算では当期純利益9,272億円のうち、約26.5%を占めるほどモルガン・スタンレーの収益への貢献は大きい存在となっています。
MS出資の持分法投資損益・出資採算の推移
出所:2024年3月期 投資家説明会資料
アライアンス2.0による協働の深化【2023年7月発表】
2023年7月にMUFGとモルガン・スタンレーは2008年に始まった両社の戦略的提携をより深化させた「アライアンス2.0」を発表しています。
内容は外国為替のトレーディング業務と機関投資家向け日本株ビジネスの分野における業務連携です。
外国為替トレーディング業務の連携
外国為替のトレーディング機能をモルガン・スタンレーが持つ外国為替取引プラットフォームに集約させることで、価格競争力や商品ラインアップの拡充を目指すものです。外国為替のセールス業務は引き続き各社で行うため、顧客から見た窓口は従来通りです。
出所:三菱UFJフィナンシャル・グループとモルガン・スタンレーの戦略的提携について 2023年7月
ITシステムの活用による外国為替取引が進化した結果、外国為替市場における競争が激化しており、ITシステム開発のコスト負担がが増加基調にあります。
一方で外国為替トレーディング業務への更なるIT投資は不可避であり、大規模なシステム開発に耐えるために取引を集約化する必要があったことが背景です。
機関投資家向け日本株ビジネス・ECMの連携
機関投資家向けの日本株セールス、コーポレートアクセス、セカンダリー売買、リサーチ調査を三菱UFJモルガン・スタンレー証券からモルガン・スタンレーMUFG証券へ統合することを発表しています。
ECM(株式資本市場業務)は基本的にはMSMSとMUMSSの2社による共同主幹事体制となります。国内のみで販売する案件はMUMSS引受、MSMS販売委託で対応するケースがありえます。
出所:MUFG Investors Days 2023年7月
MUMSSとMSの連携のまとめ
2008年に始まった三菱UFJ・FGとモルガン・スタンレーの連携はさらに深化させていく方向にあります。
MUMSSとMSMSの証券子会社2社の合算で業績開示を今後は行っていく方針であり、合算ベースでは日本において準営業収益ベースで野村證券に次ぐ2位のポジションをうかがえる位置にあります。
両社の強みを活かしてお互いの弱みを補強する提携関係にあると言えます。
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