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メンバーシップ型雇用システムは維持できるのか?【米国人は生涯に平均11.7回転職する】

これだけ変化の早い時代の中で、日本の伝統的な大企業に見られるメンバーシップ型雇用システムは持続可能なのか?

新卒を一括採用し、転勤を伴う人事ローテーションで人材を育てていくのがメンバーシップ型雇用で、日本で見られる日本独自の雇用システムです。一度会社に入ると外部との人の出入りはなく、社内評価が重視されます。日本企業で働くあなたは「横串を指す」という言葉を聞いたことはないでしょうか?日本企業における内部評価の公平性を重視する言葉です。

ジョブ型は欧米企業で見られる雇用システムです。人の出入りは頻繁にあるため、市場評価・外部での評価が重視されます。そのため国際比較でも米国人は生涯に平均11.7回転職するそうです。

まずはジョブ型とメンバーシップ型がどのように違うのか比較をしてみましょう。

目次

ジョブ型とメンバーシップ型の雇用システムの比較

ジョブ型とメンバーシップ型の雇用システムについて主だった特徴をまとめてみます。

ジョブ型メンバーシップ型
欧米企業などで広く採用日本独自の雇用システム
職種別に欠員に応じて人材を採用新卒の一括採用
人の出入りは頻繁にあり人の出入りは原則なし
キャリアの軸は職種キャリアの軸は会社
専門性を重視社内事情に精通
短期的な成果を重視長期的なコミットメントや人柄等を重視
外部の競争力重視内部の公平性重視
降格・減給あり・雇用保証なし年功序列・終身雇用
社員教育は主に外部に依存(例:MBAなど)研修・教育制度は充実

従業員を社内で育てる日本のメンバーシップ型雇用は欧米キャッチアップを目標とした高度経済成長期には非常に効果的な雇用システムでした。長期的な研究開発や商品開発には非常に適していたと言えます。

ではメンバーシップ型に適した仕事とは具体的にどのようなものでしょうか?

メンバーシップ型の特徴:定型的かつ正確な処理に強い

決まった手順に従って正確に事務処理を行うような仕事はメンバーシップ型雇用が向いています。

具体的な業務を挙げると、例えば鉄道の運行はどうでしょうか。日本の鉄道は世界でも類を見ないほど時間に正確です。東海道新幹線は10分間隔で運行され、山手線は1-2分おきに走っています。

このような芸当ができるのは日本のあうんの呼吸もあると思いますが、メンバーシップ型雇用システムが大きく支えていると思います。正確に仕事を処理することが第一であり、むしろ失敗したときにバッテンがつくという減点方式の人事評価でもあります。

他に例を挙げると、日本の銀行も正確な事務処理で有名です。1円でも合わないとその原因を徹底的に追及して最後まで調べるのは本当です。1円合わせるのに10人の銀行員が残業したらコストとリターンが合いませんが、1円のずれであっても正確であることが最優先事項です。

海外の銀行ともやり取りをした経験がありますが、金額のずれがあることは割と頻繁にあり、「あ、金額ずれてた?ペナルティ支払うから、金額教えて」みたいな軽いノリの返事が来て驚いたことがあります。

このように、ルーチン業務が主体の定型的かつ正確な処理が要求される仕事はメンバーシップ型雇用が適していると思います。

メンバーシップ型の特徴:横ぐしを指す人事評価

一方でメンバーシップ型では人事が不透明になりがちです。会社側もこれはわかっていて、とにかく「横ぐしを指す」ことに一生懸命になります。横ぐしを指すとは異なる業務を行う二人を同じ評価軸で評価をして優劣をつけることです。

異なる業務を同じ評価軸で評価するのですが、実際こんなことは可能でしょうか?野球で内野手と外野手を同じ軸で評価したりできるとは思いませんが、日本の大企業では横ぐしでの評価を行っています。

会社の指示命令によって転勤や異動が行われ、Aさんは営業、Bさんは経理など様々な仕事につきます。人事評価はまず最初は部の中での相対評価、トップクラスなのか中程度なのかといった評価がされます。次に部門の中での相対評価となります。

異なる部署でそれぞれトップクラス評価を受けているAさんとBさんがいた場合、AさんとBさんの二人ともトップクラスの評価としてよいのかどうか。AさんとBさんを比較した場合に、Aさんは部署ではトップクラスだけど別の部署のBさんと横串した場合にBさんの方がよりトップクラスの評価にふさわしいといった調整が行われます。

これが横ぐしですが、所詮、人事評価は人の主観で決まっています。かなりの時間を投入して”横ぐし”を指す作業をしており、公平な評価を実現しようとしているのは間違いないです。

メンバーシップ型の特徴:あいつもそろそろ〇〇に

またメンバーシップ型の評価システムの企業でよく聞くのは「あいつもそろそろ○○に」というフレーズです。

〇〇は例えば係長だったり課長だったりします。そろそろという言葉にそれなりの期間よくがんばってきたからそろそろ係長くらいにはしてあげようかという考え方が表れていると思います。

一生懸命こつこつやってきた人に報いるとも言えます。

総じて、メンバーシップ型の評価システムにおいては長く働いて組織に貢献することでより評価が高まる傾向にあります。言い換えると、中途採用には不利に働きがちとも言えます。

メンバーシップ型の特徴:会社にしがみつく人材の大量生産

人の出入りの少ないメンバーシップ型の企業では、それぞれの企業ごとに独自のフォーマットやテンプレートで業務が作られており、例えば同じ職務であっても異なる企業では業務の仕方も大きくことなることになりがちです。

そのため年を取ればとるほど、つぶしが効かなくなるため会社にしがみつく人材を大量生産することとなります。

メンバーシップとは言いえて妙であり、メンバーシップから外れないようにサラリーマン人生の後半はしがみつく人材が増えることとなります。

会社で働くことの国際比較

ここで労働政策研究・研修機構がまとめている国別の勤続年数を見てみましょう。

平均勤続年数
アメリカ4.1
韓国6.0
イギリス9.5
ドイツ9.7
フランス10.2
イタリア11.3
日本12.3
出所:労働政策研究・研修機構 データブック国際労働比較2024

勤続年数の国際比較ではアメリカは極めて短い年数となっています。日本の12.3年はドイツ、フランス、イタリアなどと比べても突出しています。日本の就職はいわゆる「就社」に近いと言えますが、米国では字の通り就「職」なので、専門性を武器に好待遇の仕事があればすぐに会社を移ります。

また米労働省労働統計局の調査によると、米国人の平均の転職回数は11.7回です。一方で日本人の平均の転職回数はゴールドキャリアの調査によると、2.23回とのこと。

労働市場の流動性の低さは低賃金の大きな要因と言えるのではないでしょうか?

転勤と転職はどう違う?

わたしは他人が決める転勤よりも、自分のことは自分で決める転職の方が納得感があると思ってます。

どちらも新しい環境で新しい人と働くという意味では変わらないんですけどね。見方によっては転勤の方がリスクが高いなと思います。ひとつの会社に長くいると会社や人事部がすべて差配してくれるので、主体的に自分のキャリアを考えないクセがついてしまう気がしてます。

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