投資銀行とコンサルティングファームはどう違うのか?
よく聞かれる質問ですが全く違うものであり、仕事上では比べたこともないというのが率直なところです
この記事では投資銀行とコンサルティングファームの共通点と違いを解説していきますが、投資銀行で20年以上働いきましたがコンサルティングファームとの関わりはありませんでした
まずこの点についてお話しします
投資銀行に20年いてコンサルとの接点なし
わたしは日系・米系の投資銀行で合計20年以上働きましたが、コンサルティング・ファームと仕事上で関わることは一切ありませんでした
弁護士や会計士とは一緒に案件をすることはあり接点はありました
コンサルについてはまれに投資銀行からコンサルに転職する人、コンサルから投資銀行に入ってくる人などが若手でいましたが、あまりメインストリームではなかったと思います
そういえば一度だけ日系金融機関の時に人事制度の改定がありました。その際、新しい制度導入に際して経営陣より某米系のコンサルのアドバイスも受けていると説明がありました
仕事上の関わりはこの程度で、ほぼ接点がないくらい投資銀行とコンサルティングファームは違うものでした
まずは共通点から見ていきましょう
コンサルティングファームと投資銀行の共通点
外銀・コンサルともに就活・転職での難易度が高い
年収が高い・実力主義の外資系・早期に専門性が身につく、こういった点から就活でも転職でも人気の高い業界であり、入社難易度は高いです
投資銀行でもコンサルティングファームでも日系ファームはありますが、外資系が業界をリードしており、少数精鋭のイメージもあって一般には外資系のほうが人気が高くなっています
顧客は大企業・仕事はプロジェクト単位
投資銀行もコンサルも顧客は大企業であり、仕事はプロジェクト単位(案件ごと)に進めていくのが共通点です
誰もが知っているような大企業に対して提案を行い、先方の役員クラスと議論をする機会に若くして恵まれるが多くあります外銀もコンサルもプロフェッショナルファーム
米国では弁護士事務所や会計事務所と並んで、投資銀行とコンサルティングファームはプロフェッショナルファームとして位置づけられています。プロフェッショナルファームは通常の会社組織とは異なり、以下のような特徴があります
- 専門性の高いサービスを提供する
- 資本集約度が低く、基本的に人材が資本
- 働いている個人の独立性が高い
投資銀行もコンサルも中長期的に専門性を身につけてキャリアを築いていきたい人には適した業界と言えます。次の記事でもプロフェッショナルファームについては解説してますので参考にしてください
アップ・オア・アウトのカルチャー
アップ・オア・アウトとは「昇進するか、退職するか」という意味であり、投資銀行でもコンサルでも共通しているカルチャーです
外銀だとアナリストを3年やり、アソシエイトに上がれるか、または会社を去ることになります。投資銀行のアナリスト・アソシエイトのジュニアの間は、このアップ・オア・アウトを過度に心配する必要はないと思っています
他人との競争の結果、アナリストからアソシエイトに上がれないということは最近はあまりなく、むしろ自分の気持ちがついていくかどうか、自分のモチベーションを維持できるかどうかのほうが問題と思います
次にコンサルと投資銀行の相違点を見てみましょう
コンサルティングファームと投資銀行の相違点
投資銀行は戦闘民族
投資銀行は戦闘民族です。案件を獲得するために競合他社と戦っています。案件のために他社を出し抜けるなら何でもやるのが投資銀行であり、コンサルにはない特徴と思います
ファイナンスの案件では複数の証券会社が主幹事に指名されることが通例です。3社から4社、場合によってはもっと多いこともあります。そのような時、小学生レベルと言ってもいい嫌がらせが主幹事に指名された証券会社間で見られます
案件を獲得するまでは競合する関係であるものの、顧客からマンデートをもらったら案件が終わるまでは基本的には運命共同体です。案件の成功のために協力するのが本来のあるべき姿ですが、一方でこの案件が終わった後も、証券会社同士の競合関係は永遠に続きます
そのため、他社を叩けるときに叩いておくというのは投資銀行の基本です。猿山のボス猿が強いのは自分だと誇示するのと一緒です
嫌がらせは案件にクリティカルな影響がない範囲で行われます
例えば、
- トップレフトの会社が顧客の担当役員のスケジュールを共同主幹事に共有しないので、共同主幹事の案件担当者は自分のスケジュールがぎりぎりまで決められない
- 部屋に通されて時間になったが顧客も共同主幹事も現れない。時間は過ぎているのにミーティングはいつから始まるのかと思っていたら別の部屋ですでに始まっていた
どこまでやるかはその人の人柄もあると思いますが、平然とこんなことが起きるのが投資銀行の世界です。戦場でそれはずるい、ルールを守れなんて通用しないですよね。それと同じじゃないかなと思います
狩猟民族とも言われますが、わたしは戦闘民族のほうがイメージに近いです
投資銀行はBS・コンサルはPL
投資銀行はBSを見て、コンサルはPLを見ると言われます
M&AはBS(バランスシート)における資産を買う、売るの話であり、DCMは負債の調達、ECMは資本の調達です。証券化などのアセットファイナンスも顧客のBS上にある資産を活用したファイナンスです
まとめると、投資銀行の仕事は顧客のバランスシートにインパクトがある仕事です
コンサルについては多くは語りませんが、コンサルに依頼して人事制度の改革を手伝ってもらう、などはPL(損益計算書)における人件費に関わるところではないかと思います
お金の嗅覚
投資銀行に長いこといたのでお金の臭いを感じとる人に何人か出会いました。このお金に対する嗅覚の鋭さは投資銀行に特有ではないかと思います
- しばらくお客さんに会ってないと思い、久々に訪問してみたら、大型案件を検討していてすぐに提案を行いぎりぎり案件にすべりこんだ
- 嫌な予感がするから念のため提案をしておいたら、数日後に他の会社とすでに案件を進めていたが、せっかく提案をくれたので御社にも案件に入ってほしいと言われた
こんな例は山ほどあります。お金を嗅覚でかぎ分ける、皮膚感覚で感じ取るというのはインベストメント・バンカーとして生き残っていくための必要なスキルかもしれません
コンサルについてはわたしは勝手に大学教授のような人が多いイメージで捉えてます。商売人というより研究者
もちろん投資銀行にも研究者・学者肌の人はいますが、お金に対する執着は必要なポイントかもしれません